44.いつだって時計の針は進む ページ44
「変わりたくないと思うのは、私だけなんでしょうか」
「逆に、常に変化を求めてる奴の方が異質だろ」
ふわあふ、と欠伸をひとつ漏らす銀さんは、かと言ってこの話題を蔑ろにしようとはしない。
「つーか、お前の方も変わっちゃってんじゃねェの。何、昔"総くん"って呼んでたの？彼奴のこと」
「そうですよ」
「いつから今みてェな、他人行儀な"沖田さん"になっちまった訳？」
「他人行儀じゃないです。分けてるんですよ、ちゃんと。」
「何と何を？」
「真選組の一員である自分たちと、武州にいた頃の自分たちを。」
「それを変化って言うんじゃねェの？」
「何が変化、してますか」
「お前らの立場」
「……。」
そう言われてしまえば、全く持ってその通りだった。
私達は、武州でなんてことの無い侍もどきをしていた。
それがいつしか浪士組になって、真選組になって。
土方さんは髪をばっさり切って、沖田さんは背が伸びて。
……ミツバさんは、何処にもいなくなって。
(……変わるなという方が、馬鹿らしい)
それほどまでに、変わってしまった。
変化を恐れる私を置いて、変化しきってしまった。
私の心はいつまでも、ミツバさんのいる武州で馬鹿なことをしている、侍もどきのままだ。
「変わりたくない、変わるのが怖い。そう言いながらも、お前ェだって変わってるだろ」
「何処がですか」
「まず毎秒髪は伸びてるだろ。それからその爪、ちゃんと手入れしてんだろ。手入れするっつーことは、昨日までとは違うようになってんだろ」
「それは、見た目の話でしょう。私が怖いのは、」
「内面の変化、ってか？それも変わってんだろ、現に今も」
「……どういう、」
「こういう話を俺にしようとした時点で、前に会ったときのAとは違ェってこと。何かあったんだろ、どーせ沖田らへんと。」
はあ、と息を吐く銀さんは呆れ顔。
「…どうして土方さんといい、銀さんといい。すぐに何か────沖田さんと何があったと、気づくんですか？」
「んー？親ってのは結構見てるもんだぜ？」
「銀さん、私の親なんですか」
「親みてェなもんよ。俺にとっちゃあてめェなんか娘だ、娘。神楽と何も変わんねェ」
「……土方さんも、そうなんですかね」
「知らねーよあのクソマヨラーのことは。今は俺の話してんの。」
「……そう、ですね」
自分以外のことなんて何も分からない。
酷く当然なことを、初めて教えられた気がした。
45.チーズケーキがチーズケーキでなくなる頃に。→←43.変化を恐れても人は成長することを辞めない
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ！総悟！違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (
レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でｷｭｯとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓ｷｭｯってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました･･･笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます！ (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年8月17日 23時
