39.俺らしさ皆無 ページ39
季節は過ぎ、すっかり暑さは身を潜め、代わりに夜が来るのを早くしている。そんな時季に差し掛かった。
時々吹く寒い風に追い立てられるように、俺はここしばらく、焦っていた。
「今日は草間さんの夕食、ご一緒してきます」
「あ、沖田さん。私今日の非番は屯所を留守にするので、何かあったら携帯に連絡ください」
「明日ですか？……すみません、明日はちょっと。」
(………………。)
草間の野郎との出かける頻度が、以前では考えられないくらいになっている。
いつの間にそんなにも親しくなったのかなんて、部外者の俺に分かるはずがない。
今頃、草間の野郎とどんな話をしているのだろうと考えて、電話でもして邪魔してやろうかと思って────出来た試しがない。
Aの番号を開いて、ただ、発信ボタンを押すだけの単純な動作が出来ない。
自分で自分に苛立っている。
「……どうしたんですか沖田さん、顔色悪いですよ」
朝っぱらから、そんなことを言われた。
空にはまるで俺の胸の内でも映すかのように、暗い雲が広がっている。
奇しくも今日は、Aが非番だった。
非番なんてそんなにぽんぽんある訳でもねェはずなのに、またか、と思ってしまう。
……ぽんぽんあるはずない非番の度に、草間と出かけていると、思い込みがついてしまうほどには。
「沖田さん？大丈夫ですか？」
私服を纏ったAは、俺の顔を覗き込む。対する俺は隊服で、仕事中だった。
「……今日も、どっか行くのか」
「今日も、って」
ぽたり、と雫が落ちてきた。
それは俺の目からではなく、暗い雲からだった。ぽたり、ぽたりと地面を濡らしていく。
「……どうしたんですか、沖田さん」
何がでィ、と言おうとして、言葉が出なかった。Aの携帯の着信音が鳴って、喉から声が出なくなった。
また彼奴か。
また彼奴んとこに行っちまうのか。
「あ、……すいません、ちょっと」
誰からの着信なのか確認したAは、俺に断ってその場を離れようとする。
────もう、頭なんて動いていなかった。
「…………沖田さん？」
Aを、後ろから抱きしめていた。強く抱きしめると、引き締まった、それでいて柔らかい身体を全身に感じる。
訝しげに、心配げに、「沖田さん」という声が耳に届く。
「……行くな」
消え入りそうな言葉は、ちゃんと伝わったのだろうか。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ！総悟！違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (
レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でｷｭｯとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓ｷｭｯってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました･･･笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます！ (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年8月17日 23時
