37.既視感ならぬ、既感感 ページ37
「そう言うAちゃんは、憧れとかあったりするのか?」
「うーん……というか、私はそっちよりも、幼なじみが報われないのが切なくて堪らなかったですかね」
あんなに一途にヒロインを想っていたにも関わらず、無下にされてしまうのはあまりに辛すぎる。
彼にはどうか、別の良い人を見つけて幸せになって欲しい。
「恋とか愛とかって難しいですね。…結局、最後のモノローグは幼なじみだった訳ですけど、一体どういう気持ちで言ってたんでしょうか」
むむむ、と顎に手を当てて考えていると、近藤さんはにこにこと笑みを浮かべながらチャンネルを回す。
「いやあ、Aちゃんがここまで夢中になってくれるとは思っていなかった。誘って良かったよ」
「ありがとうございます。数日間、楽しませて貰いました」
「俺もAちゃんと見れて楽しかった」
感想を言い合える相手がいるって大きいよなあ。なんて言う近藤さんにうんうんと頷く。
「次からはこの時間帯、何が放送されるんでしょう」
「どうやらサスペンスみたいだ。」
「サスペンスですか……」
変に恋愛ものを見たせいで、私の心は今、ラブストーリーを求めている。
どうもサスペンスという気持ちにはなれなかった。
「……じゃ、私は仕事に戻りますね。また面白そうなドラマがあったら誘ってください」
「おう、わかった!」
「では失礼します」
入ってきたときと同じく、静かに襖を閉じる。
少しずつ日が傾いてきた空を眺めて、ひとつ息を吐いた。
『あんな奴辞めて、俺にしとけよ』
『俺だったら絶対、お前のこと泣かせたりしないのに』
幼なじみの言葉が頭に残る。
これでも私は女なので、やはりそういうセリフにはキュンときてしまった。
あんなこと言われてみたいなあ、だなんて、後ではたと気づいて恥ずかしくなるようなことも、今なら考えられてしまうのだ。
「……。」
あのドラマが、何処かで聞いた事のあるようなシチュエーションだと感じたのは、あえて黙っておくことにした。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時