【銀魂】ああどうも、沖田さん。

4.赤、朱、紅 ページ4

「A、いるか？」

「いますよ、どうぞ」



自室の外から沖田さんの呼ぶ声が聞こえる。

今日は非番だけれど、外に出る用事もないのでテレビを見たり、本を読んだりしていた。

す、と襖が開き現れた沖田さんは隊服だった。



「てめーにプレゼントでィ」

「え、なんですか？」



広げた手のひらにぽん、と乗せられたのは、鮮紅朱のマニキュア。

店で見かけたことはあれど、手にしたことはなかった。



「え、どうしたんですか急に」

「気分」

「沖田さんがそんな気分になることってあるんですか…！？」

「うるせーぞ」

「でも私、マニキュア塗ったことないです」

「じゃあ俺が塗ってやる」

「明日は霰(あられ)でも降るんですか！？」

「オイ」



本気で明日の天気を心配していると、手からマニキュアを奪われる。

入ってきた襖を閉めると、沖田さんはどっかりと私の前に座り込んだ。



「手、出せ」

「自分でやります」

「俺がやるっつってんでィやらせろ」



半ば強引に手を引っ張り出され、仕方なく大人しくする。

ぺとり、と爪に乗せられた色があまりに鮮やかで、思わず見蕩れてしまう。

気づけば両手とも塗り終わっていて、爪が朱色に染まっていた。



「初めてにしちゃあ上出来だろィ」

「……綺麗です、この色」

「俺が選んだんだから当たり前ェだ」



乾くまでそのままな、と言われ、両手のひらを開いたまま爪を眺める。何だか別の人になったような気分だ。



「……Aにゃ朱(あか)がよく似合う」

「沖田さんの目の色と同じですか？」

「……なんで、んなこと気になるんでィ」

「同じだったら嬉しいじゃないですか」

「……調子乗ったことばっか言いやがってこのガキ」

「言っときますけど私は早生まれなんで実質沖田さんとは同学年ですからね」



ち、と舌打ちされる。口が減らないとでも思われているんだろう。

不意に手首を掴まれて、その意図を掴み損ねている間に、広げっぱなしの手のひらにちゅ、と口付けられた。



「ちょ、」

「まだ乾いてねェだろ」



にやり、と笑う顔の意地悪なこと。直感的にやられた、と気づいた。紛れもなくこの男はドSで、マニキュアを塗ると頑固すぎた時点で気づくべきだった。

後悔している間にも唇は指の股や、終いには手首にまで触れている。



「〜っ、沖田さん！」



擽ったくて堪らなくって思わず大声を出した。



「仕返しでさァ」



生憎仕返しされるようなことをした覚えはない。

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