21.負けん気満点 ページ21
「…………ふーん」
ぺらり、と封筒をひっくり返した沖田は、きっと山崎と同じものを見たに違いない。
『草間友彦』の4文字を。
俺はここで死ぬのか、と一種の諦めを感じた山崎だったが、しかし予想外にも沖田はその手紙を破ることも燃やすことも、見なかったことにすることもなかった。
ただ何事もなかったかのように、それを山崎に返してきたのだ。
「えっ……」
「何びっくりしてんでィ」
「親の仇のように手紙を扱うかと思いまして……」
「てめェ、俺のことを何だと思ってやがる」
「ハ、ハハ……」
山崎がそう思うことも仕方の無いことだろう。他の隊士がこの場面を見ていたら、きっと誰もが大きく頷いていただろうに。
「……いいんですか?Aちゃんに渡しても」
「ふざけたこと言ってんじゃねェよ、ザキ。そこまで根性腐ってねェや。
草間の坊ちゃんが堂々と向かって来てンだから、此処で卑怯なことしちゃあ男が廃るってもんだろ」
堂々と、とは。
明らかに沖田や他の隊士の目につく可能性が限りなく高いこの屯所に、わざわざ自分の名前を隠しもせずにこの一通を送ってきたことを指すのだろうか。
山崎はひやりと背筋を凍らせる。
何が"卑怯なことしちゃあ男が廃る"、だ。
完全に潰す気じゃないか。
「……あんまり聞きたくないんですけど、もしかして沖田隊長、楽しんでます?」
「あ?」
そう尋ね返してきた沖田は、口元を持ち上げてはいたものの細めた目は一切笑っていなかった。
「あんな坊に渡してやる気なんかねェってことだよ」
100点満点の宣戦布告。
いや、これはもしかしたら、先に仕掛けていた草間友彦からの宣戦布告に、沖田総悟が受けて立つと同じ土俵に立ったことを意味しているのかもしれない。
山崎はひとりそんなことを思って、この場から去る沖田の背中を見ていた。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時