17.超逃げて ページ17
「貴女は美しい。そして強い。強かで、素晴らしい。どうか僕の子供を産んでください」
「ちょ、」
手を握られたままずいずいと距離を、顔を近づけられることに、さすがに恐怖を覚える。
キラキラと輝く邪気のない瞳に飲み込まれそうになったとき、「ちょおおーーーっと失礼しやすぜ」という間の抜けた声と共に沖田さんの身体が、私と"お隣さん"との繋がりを切断する。
「犯人に暴行を加えられて頭おかしくなっちまってやすぜ、アンタ。早く救護班の所へ行くことを勧めまさァ」
さらっと、沖田さんの身体の後ろに隠すように腕を引かれる。
「おかしくなんかなっていないさ。僕は貴女に心を奪われてしまったんだよ。助けてくれて、本当にありがとう。僕の伴侶になるつもりはないかい?」
「残念ながらありやせんってこいつが言ってまさァ。さーさっさと行った行った。」
「君には聞いていない。僕は彼女に聞いているんだ」
「あ?」
ぴり、と沖田さんの空気が張り詰めたのを感じて慌ててひょこりと前に出る。
「そんな、今日会ったばっかりなのに結婚っていうのは無理です。だって私たち、お互いの名前も知らないじゃないですか、あはは」
これで切り抜けられると思っていた。
本当に、単純に、犯人に蹴られたから思考が正常でないと思ったのだ。
「ああ、これは失礼。僕は
「…
「なんて素敵な名前なんだろう。僕はますます貴女が愛おしいですよ、Aさん」
「あ、あはは…」
本格的にヤバい奴だと感じてしまった。
確かに強盗から助けてもらったから恩を感じられて貰うのは分かるし、理解も出来る。多少なりとも好感を持って貰えるようになるのもわかる。
ただ────顔を合わせたその瞬間にプロポーズは、どう考えても今までの人生では経験したことのないことだった。
「……ところで、草間って、もしかして、あの?」
「そうです、Aさん。あの草間財閥の、草間。」
「ボンボンってな訳だ」
不機嫌そうな沖田さんの声。
草間財閥と言えば聞いたことがないはずがない。あのホテル、あの駐車場、あのマンション。所有するのはどれも草間財閥だ。
「僕は貴女のような人と結婚することで、きっと強くて美しい子供を授かることが出来る。」
「あ、あの、話が飛躍しすぎていませんか?」
「話すだけ無駄だろィ」
何故だかピリリとする空気に緊張する。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時