87.俺らしいやり方 ページ37
ぐいぐいと車の中まで押し込められ、バタンと扉が閉められた。
外の喧騒が遮られて、急にしんとした空間に放り込まれたような感覚に陥る。
「……あの」
何かを発するでもなく、返事をするでもなく。
ただ壊れ物を扱うかのように、沖田さんは私を抱き締めた。
背中を抱く手に力がこもっている。ゼロ距離で感じる体温に、何よりも安心した。
またぽろぽろと涙が零れてきて、私も沖田さんの背中に手を回す。
その手は震えてしまっていて、沖田さんの背中を掴むのも一苦労だった。
「A…」
耳元で囁かれる自分の名前は、こんなにも心地よい。
「もっと、呼んで、ください」
「A、」
「もっと、」
「A、A」
染み渡る幸福感に、顔も、身体も、心もふにゃふにゃになっていくようだ。
「……総くん、たすけてくれて、ありがとう」
「…懐かしい呼び方」
「ふふ」
ぽんぽんとあやすように背中を一定のリズムで叩かれる。
それからしばらくしてゆっくり離れる身体に名残惜しさを感じていると、頬に手を添えられて、こつんと額同士がぶつかる。
「……もうあんな思い、御免でさァ」
「あんな思い？」
「現場に着くまでは、不安と心配で死んじまいそうだった」
「…うん」
「いざ現場に着いたら…悪ィ、あんま思い出させるようなこと言いたくねェけど、」
「大丈夫」
「あの野郎のこと、ぶっ殺さねェと気が済まなくて。転がってる草間見て、どうしようもねェくらい苛立った」
「……」
「土方の野郎が指示やらなんやら出してたが、何も頭にゃ入って来ねェ。お前のことしか考えらんねェんでィ」
至近距離で話す"総くん"は、ずっと眉を顰めて苦しげに目を閉じていたけれど、ふうと一息ついて、ゆっくり私を見た。
「……ずっと避けててごめん。てっきり草間の野郎といい感じになってると思ってた」
「……それは、総くんだけじゃなくて、私も避けてたし、」
「けどそれじゃあ性にあわねェんでィ。やっぱり欲しいもんは、力づくでも取りに行くのが俺らしいって、どっかのお節介が言ってきやがって。」
「お節介……」
頬に添えられた手が熱い。ばくばくと、まるで総くんの心臓の音が聴こえてしまいそうで。
「…A、ずっと俺の隣にいろ。この先もずっと、俺以外の男なんざ見るんじゃねェ」
全身が沸騰しそうだ。
1度も逸らすことなくこちらを見据える視線から、逃げられるはずなんてない。
88.手の届く範囲に、ずっと→←86.これが最後のI love you
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (
レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした！最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました！ (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした！(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました！) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年12月14日 8時
