86.これが最後のI love you ページ36
全く同じ景色を見たことがある────あの時もそうだった。
あの男はそうやって、ピンチのときに助けに来る。
対する僕は、こうして床に転がっていることしか出来ない────あの時と同様に。
僕のせいでこんなことになっているのに、僕は貴女を助けることも、護ることもできない。
(…悔しい)
元々敵うなんて────叶うなんて、思っていなかった。
最初から僕のことなんて眼中になかった。気づいていた。
何とか振り向かせようとしても、あの男の存在は何よりも大きかった。
あの男の隣にいるときの貴女は、何よりも、誰よりも素敵だった。
(……悔しい)
カッコ良くて、凛として、堂々としている貴女を好きになった。
そんな貴女が、カッコ良くなくて、凛としていなくて、堂々としなくなるのは、いつだってあの男がいるときだった。
敵うはずもなかった。
(………悔しい)
あの男のせいで泣く貴女が見たくなかった。
いつだって貴女が流す涙の原因はあの男だった。
……いつだって、貴女の素敵な笑顔の要因はあの男だった。
あの男に恋する貴女が、好きだった。
どうしようもないくらい、焦がれていた。
何度僕は、貴女に好きだと言っただろう。
きっとあの男は、貴女に、好きだ、なんて言わないんだろう。
(……本当に、好きだった)
容姿も悪くなく、一大財閥の息子の僕は、そりゃあ女性関係に困難はなかったけれど。
そうやって近づいてきた女性は皆、財産だったり地位が目当てで、その目の奥には薄暗い欲が垣間見えていた。
それが嫌で、海を渡って江戸に来た。
僕を助けてくれた貴女は、僕だけを助けた訳じゃなかった。
僕はただの、貴女が助けた人々のうちのひとりに過ぎなかった。
見返りを求めない態度に、とてつもなく惹かれた。
こんなにも素敵な人がいるのかと。
貴女に出会って、視界が、頭の中が虹色に彩られた気がした。そしてこれが恋だと知った。
人を好きになること、振り向いて貰うために努力すること、それから、実らないこと。全て貴女が教えてくれたこと。
きっと貴女は、誰よりも大好きなあの男の隣で生きていくんだろう。
僕では立つことの出来ないその場所に、あの男を置くのだろう。
同じ土俵にすら、立ってはいなかった。
僕では貴女を護ることは出来ないから。
薄れゆく意識の中で、あの男に運び出される貴女の姿を見た。
そして、どうか彼女が幸せでありますようにと願って、瞼を下ろした。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時