74.ここから始まる私達の物語 ページ24
荷物を背負い、走ってあの場所へ行く。
はあ、と息を切らしてそこに着くと、勿論近藤さん達の姿はなかった。遥か前方に、それらしき集団が歩いているのが見える。
代わりに、その場にいたのはミツバさんだった。その姿を見つけた私は、目を丸くしてしまう。
『…Aちゃんも、江戸に行ってしまうんだって?』
そう尋ねる、切なそうな顔にきゅうと胸が締め付けられる。
……ミツバさんは、ついさっきまでの私と同じ立場なのだ。そう思うと、胸は張り裂けそうに痛い。
『……総ちゃんのこと、お願いね』
最愛の姉を置いてまで江戸に行くことにした総くんは、一体どんな気持ちだったのだろう。
自分を育ててくれた人を置いて行くのは、どんな気持ちなのだろう。
────それは1番、私がわかっているはずだ。
ぐっと歯を食いしばって、こくりと頷く。
『…総くんは、私に、任せてください』
ぎゅ、と拳を握りしめる。ミツバさんの目には、覚悟を決めた私の姿が映っていた。
それから、と続ける。
『土方さんに、変な女の人が寄ってこないように、見張ってますから!』
私がそう言うと、ミツバさんは驚いたようにぽかんとして、それからけらけらと笑った。
Aちゃんたら、もう。なんて笑うミツバさんは何処か泣いてるようにも見えた。
『Aちゃんがいるなら、心配ないわね。……江戸でも頑張って』
そっと頭を撫でてくれた手の温もりは、生涯他では味わうことのできない、"姉"の温もり。
両親に先立たれ、ひとりだと思っていた私は、いつしかひとりではなくなっていた。
『…はい!いってきます!』
『いってらっしゃい』
大好きな人たちに見送られ。
私ははるか先を歩く集団に、置いていかれないように全速力で走った。
追いつくのは難しい、けれど何があっても追いつきたい。
それは、私の心の距離にも似ているような気がした。
追いつく頃には、私の足音は決して軽快ではない。けれどそれほどの努力をして、ようやく彼らに追いつける。
もう少し、もう少し。
手のひらが、背に、触れる。
────私たちが、後の浪士組、そして真選組になることは、まだ誰も知らない話。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時