70.たくさんのきっかけのお話 ページ20
稽古をつけてもらうのは楽しかった。
女は私の他にはいなかったけれど、もしかしたらそのおかげで、圧倒的に力の差のある相手と試合をすることが多かったから、メキメキと実力がついたのかもしれない。
『Aちゃんもなかなかやるようになったなァ!』
『ほんと!?ありがとうっ、近藤さん!』
人見知りだった私にとって、此処はとても居心地がよかった。
まるで父親のように頼りがいがあって、褒めてくれて、時には厳しく指導してくれる近藤さんに特に懐いていた。
みんなと稽古をすることによって、人見知りも徐々に改善されていった気がする。
最初は口数の多くない土方さんのことは苦手だったけれど、時に祖母と喧嘩して家を飛び出してきたとき、何も言わずに隣にいてくれる土方さんに、何処か兄のような感じを抱いていた。
他の人にも打ち解けてきたのに、私は一向に"あの男の子"と仲良くなれていなかった。
唯一同世代の相手で、何度試合をしても敵わない。
名前は『沖田総悟』というらしいけれど、いまいちなんて呼んだらいいのかもわからない。
近藤さんや土方さんは『総悟』と呼ぶけれど、それも自分が呼ぶとなれば何だかしっくり来ない。
それに、その子はいつもむすりとしていて、私が近藤さんと仲良く話していたら、ジト目で見てくるし、土方さんの傍にいても、睨むようにこちらを見てくる。
だから何だか近寄りがたくて、正直仲良くしたかったけれど、あと1歩が踏み出せず足踏みしているような状況だった。
『あら、貴女がAちゃん?いつも総ちゃんがお世話になってます』
あの子似の美人にそう話しかけられたときは、目ん玉が飛び出るかと思った。
子供ながら美人だと思ったし、あの子に似ているとも思っていたから。
『……総ちゃん?』
『私、総ちゃんの姉の、ミツバって言います。いつも総ちゃんからお話は聞いてるわよ』
うふふ、と微笑まれて、いろんな意味でどぎまぎしてしまった。
まず美人だ。美人。びっくり。
それから、あの子が私のことを話しているということにも、びっくりした。
その話を何処で聞いていたのか、『姉上!』と焦ったような口調のその子が慌ててミツバさんと私を引き剥がす。
『あんまりいろんなことを言い過ぎないでください!』
『あらどうして?私、Aちゃんとお話したいのよ』
私はあの子とほとんど話したことがないのに、どんな話題があるんだろう。
そうやって興味を持ち始めたのがきっかけ。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時