52.後悔先に立たず ページ2
よく晴れた日だった。
寒さを感じるようになりつつも、心地の良い気温にはあ、とひとつ息を吐く。
見回り中だった。
勿論、私は沖田さんと一緒に行動なんかしていなかった。
土方さんでなくても、私たちの距離が遠くなったことは他の隊士にもバレバレだろう。
それとなく気を使われている感じがするのが、また申し訳ない。
(……サボり監視、ね)
常習犯が、今更サボらずにいるはずもないだろうとため息ひとつ。
それにこんなよく晴れた日だ、絶好のサボり日和だとでも言うに違いない。
「……」
胸の奥にもやもやとしたものが残るのは何故だろう。
このふたつ隣の筋が、沖田さんがよく訪れる団子屋さん。
いつもの巡回コースから少し外れて、ひとつ。
……もうひとつ、筋を過ぎればそこにいるのだろう。
けれど、避けられているとわかっていて、わざわざ自分から顔を突き合わせに行く必要があるのか?
『せめて、サボってねェかだけでも見張ってろ』
土方さんのその言葉は、ただ様子を見張っているだけでいいと、そう解釈しても良いのだと、思う。
けれど、それで私が納得出来るとでも?
顔を合わせれば、なぜ避けられているのか問い詰めてしまうだろうし、胸のうちに秘める掴みどころのないもやもやを、ぶつけてしまうかもしれない。
…それは、嫌だなあ、と思った。
だからそこで足が止まった。前に進まない。進めない。
「……よし、」
大丈夫、なにも気づいていないふりは慣れっこだろう。
我慢するのは慣れている。
少しの勇気を出して、足を踏み出してみる。
────その先にある後悔なんて、予想すらせずに。
(団子屋に、沖田さんは、……、)
そちらに目を向けた。それから、目が離せなくなった。
足が、身体が、動かなくなった。
どっ、どっ、と嫌な音だけが心臓から響いている。
思わず、無意識に、気づけばそこから隠れるように身を潜めていた。
何をしているんだ自分は、と思うも、まるで鈍器で殴られているような鼓動は止まらない。
そろり、ともう一度覗き込む。覗き込みざるを得ない。
────そこにあったのは、楽しげに会話をする、男女の姿。
紛れもなく男は沖田さんだったし、女の方は知らない顔だった。
(……あんな、顔)
あんな優しい顔。
他に見たことがなかったのに。
……他に?
他じゃないところは、何処だって言うのだ。
(……うるさい、)
全部気づいてる。
ツケが回ってきたのだ。そう、思った。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時