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「連れてきたよ」
櫻井さんがそういうと
その人はすみっこの方で窓から外を眺めていた顔を
そっとこっちに向けた。
目と目がぴたりと合う。
一瞬、その人の目が見開かれたような気がしたけどすぐに元に戻った。
すごく透き通っていてきれいな目だったけど
なぜか冷たくて、感情が感じられなくて
怖い、と思った。
「……あっ…の、今日からお世話になります、松本潤です」
なんだか威圧を感じたので
しどろもどろになってしまった。
「………こんにちは。頭首の大野智です」
その声はよく通るきれいな声だったけど
その中にもどこか怪しさって言うか妖艶さがあって背筋が寒くなった。
「君が……和の友達」
「あっ…、はい……」
「これからも仲良くしてあげてね」
なんだ。
優しい人じゃないか。
「はい」
俺ははっきりと返事をした。
んふふ、って大野さんは静かに笑った。
「ちょっとこの三人に話があるから戻っててもらってもいいかな?……松本潤くん」
名前を呼ばれたとき大野さんに
鋭く睨まれた気がした。
背中がびくってなって身体が少し震える。
「じゃあこれからよろしくお願いします」
そう言って頭をさげて
部屋を出ようとしたとき、
大野さんが目は笑ってないのに
口だけニコリと笑って俺に言った。
「……耳に気をつけなよ」
「え………?」
耳……がどうしたんだ?
そう思ったけど俺が聞く前に
和が慌てて俺のことをぐいぐい押してきた。
「さっ!潤くんはリビングで待ってて下さい!すぐ行きますんで」
「えっ、でもー……」
「いいから、いいから!」
結局俺は閉め出されるような形で
大野さんの部屋から追い出されてしまった。
仕方なくリビングに戻り、
もう冷めてしまったお茶を飲みながら
一人でさっきの大野さんの言葉の
意味を考える。
耳……?
耳ってどういうことなんだ………?
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作者名:智帆 | 作成日時:2013年6月22日 9時