ご主人様の言う通り (ページ34)

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涼也「誰、あんた」

櫻井「だから、こいつの彼氏」

涼也「へぇ。そうですか」

櫻井「今後一切、こいつと関わんな」

涼也「もともとそんな気無いですけど？」

櫻井「それなら話は早い。じゃあ」

翔くんが私の手を引っ張って歩いてるから、手にしか意識はいかなかったけど、確かに涼也が舌打ちするのが見えた。
結局、お金目的だろう。

翔くんに、「お仕事は…？」
って聞いたけど「いいの」とだけ答えて、その大きな手で私を引っ張る。
安心するその手で。

誰もいないところへ連れていってくれて、そこでようやく手を離す。

「…ありがとう」

櫻井「いいのいいの」

「でも…お仕事」

櫻井「会社戻ろうと思ったんだけど、2人の声が聞こえてきてね。丁度もうすぐ昼休みだったし」

「そっか」

櫻井「俺今からお昼行くけど、来る？そこで奢らせてよ。何食べたい？」

「ごめん…お昼はいいや。和が待ってるし」

櫻井「…そんなに和が大事？」

悲しげに見えたのは、きっと私の勘違い…

「昨日ハンバーグ作ってあげるって約束しちゃったし…」

櫻井「そうだよね…また今度奢るよ」

「…ごめんね」

そう言って、また手を振って来た道を戻る。
今度はさっきよりも暗く見えたのも、それも私の恋心のせい。
私の心を読んだかのように、雨が降り出す。

「傘持ってて良かった」

家に着いた頃には、雨もやんでいた。

「…ただいま」

二宮「おかえり。どこいってたの？」

いかにも寝起きらしい格好で私を出迎える。

「翔くんの会社まで資料届けに行ってたの。和はまた夜遅くまで作曲してたの？」

二宮「そう。ってか翔ちゃんのことだから「奢るよ」とか言われなかったの」

「言われたよ？」

二宮「なんで？奢ってもらわねぇの？」

「だって、ハンバーグ作るって約束したでしょ？」

二宮「はぁ？そんなことどうだっていいんだよ。せっかくのチャンスだったのに」

「いいのいいの。
言っとくけどね、私は翔くんが好きだけど、和のことも好きなんだからね？」

二宮「なんかついでだし、お世辞だろうけど嬉しいよ。ありがとう」

「素直に「ありがとう」だけ言えばいいのに」

二宮「それだけが言えないってのが、二宮和也って男だろーよ」

「そうだね」

それから2人でハンバーグを食べて、
私は夕ご飯の買い出し、和は作曲に戻った。

雨はとっくに止んで、空には虹がかかってた。