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サトミとさとみ ページ12

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「……………」
「A!!見てみてー!!」


何年前の記憶だろう。


私がまだ《非能力者》だった頃のことだ。
原っぱで蝶を追いかけていた私のところに、サトミが人型の何かを持って走ってきた。









「サトミ?どうしたの……ってソレ何」
「ソレとか言わないでよ!この子、私の弟!」
「おと……うと?ソレが?」
「だからソレとか言わない!そっくりでしょ?」



たしかにそっくりだった。


薄い桃色の髪も、輪郭も、端正な顔立ちも。
瞳の色は確認できなかった。だって、その〈弟〉の瞼はかたく閉ざされていたから。








「創ったの?」
「うん!弟欲しいなって」


理由が軽すぎる。なんだそれ。


かっこいいでしょ、うちの弟!と自慢げに胸をはるサトミに、純粋な尊敬とわずかな嫉妬を抱く。
"弟が欲しい"、ただそれだけの理由で彼女は、私がどれだけ勉強しても出来ない事を無邪気にこなしていくのだ。









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「名前は?」
「“さとみ”!」
「……まんまだ」
「まぁいいじゃんいいじゃん!!でも設定ミスで、私が死んでからしか動かないようになっちゃったんだよねぇ……」
「それ、何十年先の話になるの……もはや弟じゃないよそれ」
「うぅ……」


悔しそうに頬を膨らませて唸る。思わず笑みを溢せば、そのまま涙目で睨まれる。



「この子、能力は?」
「とりあえず、《精霊使い》を付与したよ。他に能力が増えるかどうかはこの子次第」
「そっか」
「一回くらい話してみたいなぁ、自分の弟と」
「設定ミスしたのあなたでしょうが」


そうだけどー!と、また頬を膨らませるサトミに少し安心した。




ああ、この人もまだ完璧ではないんだ、と。


感情があって、表情があって、失敗もする。


私と同じ、普通の人間なんだとわかる。








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ちょっと、特殊なだけ。


ちょっと、優秀なだけ。


彼女は、大切な私の親友。









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弟→←最悪の思い出



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キャット(プロフ) - くまくまちゃんさん» あらまぁ僕は神じゃないよ髪だよw (2020年7月21日 17時) (レス) id: b14926060a (このIDを非表示/違反報告)
くまくまちゃん(プロフ) - キャットちゃん神かもしれない← (2020年7月20日 18時) (レス) id: 8a3f9ddf1c (このIDを非表示/違反報告)
キャット(プロフ) - くまくまちゃんさん» あら、くまちゃんだー笑 わかりました、頑張ります! (2020年7月19日 13時) (レス) id: b14926060a (このIDを非表示/違反報告)
キャット(プロフ) - ユウラリさん» コメントありがとうございます!わかりましたー!! (2020年7月19日 13時) (レス) id: b14926060a (このIDを非表示/違反報告)
くまくまちゃん(プロフ) - あのっ!面白いですっ!大好きですっ!!!A希望ですっ! (2020年7月19日 10時) (レス) id: 8a3f9ddf1c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねころん。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年1月11日 14時

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