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父は少年の肩を叩くと、彼は私たちの方へ向き直した。
小学生の頃、一度だけ転校生がやってきたことがあった。
浅黒い肌に白い歯。
皆がみんな、中学受験のために塾へ通い、難解なパズルを解いていたあの中で、ただ一人彼女だけが、自然のままに生きているような気がした。
彼女と他の子たちの間には、くっきりとした境界線があった。
マジックペンを走らせたような、切れ目。
目の前にいる男の子と、私たちの間にも、そんな線があるようだった。
明らかに彼は、この部屋の中で異分子だ。
「作間龍斗です」
低い声がしんと静まったリビングに響く。
優斗くんが唾を飲み込む音が聞こえる。
お父さんは先ほどまでと同様に笑顔を保っているけれど、一言も発しないし、ぴくりとも動かない。
私は今どんな顔をしているんだろう。
この動揺する気持ちは、果たして表情に、身体に表れているのだろうか。
作間龍斗と名乗る男の子に気付かれているのだろうか。
私はいつの間にか、目の前の男の子に腕を掴まれたような感覚になっていた。
ぐぐぐっと引っ張られ、そのまま動けなくなるような。境界線の向こう側に、引きずり込まれるような。そんな感覚だ。
いつの間にか私の方が異物になっているような気がした。
「元々の細胞を持っていた人が龍だったから一文字付け加えて、龍斗。」
淡々と機械的に喋る、平坦で抑揚のない声色。
にこりともしない表情。
まるで、ロボットのように。あるいはAIのように。彼は自己紹介を済ませた。
その姿は、この世の何にも興味がなく、魂をどこかに置き忘れてきたみたいだった。
ロボトミー手術を受けた人ってこんな感じだったのかな――そう思うほどだった。
その振る舞いに私たち兄妹が困惑していると、父はくるりと向き直り、私たちの名前や年齢を紹介した。
すると、予想外なことに、大きな猫目は私の方をちらと捉えたのだった。
一歩、二歩、歩み寄る。
私と龍斗くんの距離は数センチにまで縮まる。
近いなんてものじゃない。
ほぼほぼ、交際関係を結んでいる男女の距離感だ。
しかし、龍斗くんはそれでもまだまだ顔を近づけ、じっとこちらを覗いてくる。
このままだと、本当に彼の方へ引っ張られてしまう。
温かな、よく知った私の世界から、冷たく何も分からない彼の世界へ。
自分が変えられてしまう。
あるいは、生まれた時からやり直しさせられてしまう。
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れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
