25 ページ35
腹立たしい。
いつもだったら、優斗くんのこの明るさ、気遣いに感謝し、ほんの少しの申し訳なさを抱いていたことだろう。
けれども、今日は、その振る舞いが気に障った。
優斗くんは優しい。
明るい。
太陽みたいな人だ。
でも、その明るさは闇をかき消してしまう。
静かに、真っ暗な所から黙って優斗くんを見つめる龍斗くんの存在までもを、なかったことにしてしまう。
それが傲慢に思えて仕方がなかった。
「……昨日、どうして友達の家に泊まったの」
「新しいゲーム届いたから一緒にやろうってLINEが来てて……」
「嘘でしょ」
優しい嘘、誤魔化しをわざと摘まみ上げる。
そんなことをする自分の性格の悪さが嫌になる。
けれども、こうする以外にも方法が見つからない。じわり、じわりと優斗くんの領域へと立ち入る。
初めての感覚だ。
今までの人生で、こうして、優斗くんに対し詰め寄ったことなんてなかったかもしれない。
いや、そもそも他の誰かに対して真剣に怒ったり、何か働きかけようとしたりしたこと自体なかった。
今日の私はどうかしている。
感情のままに流されている。
けれども、優斗くんへの根拠のない怒りは収まらない。
「龍斗くんの部屋のことで、お父さんと喧嘩したんでしょ」
「……父さんから聞いたの？」
「違う、龍斗くんが教えてくれた」
再び、優斗くんの身体が固まる。
しかし、今度は動揺の色を隠そうとはしない。
だから、私も怒りを隠さない。
敵意剥き出しの視線を優斗くんへ注ぎ込む。
窓の外はいつの間にか昼間同様の明るさを放ち始めていた。
「……なんで、Aがそんな怒ってんだよ」
なんで怒ってる？
自分でもわからない。
初めに、私の心を締め付けたのは、父が、優斗くんに無断で母の部屋を龍斗くんに差し出そうとしたことだった。
けれども、これは優斗くんに対する怒りではない。
父に対する怒りだ。
じゃあ、何で私は今優斗くんに怒っているのだろう。
頭の中のメモリが、カリカリ、と音を立てながら回る。
けれども、出てくるのは昨日の龍斗くんの不安そうな顔と、甘かったり苦かったりした不思議な夜の会話だけだ。
「今日のA、おかしいよ。そんな風に俺に噛みつくなんて、今までなかったじゃん」
「おかしくない」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 130人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れお(プロフ) - 陽依さん» コメント有難うございます。そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです。ゆっくりですが更新していきますので宜しくお願い致します。 (2021年8月4日 0時) (
レス) id: 8293f3a179 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです！なんでとかはうまく言えないんですけど…これからも楽しみにしています！ (2021年8月2日 22時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れお | 作者ホームページ：https://peing.net/ja/reosndy
作成日時：2021年6月26日 21時
