＊７＊ ページ8
咄嗟に俺はAから手を離す。
「私、ファンの方々に嫉妬されちゃいますね」
俯いて、困ったように言ったAの前で、俺は動くことが出来なかった。
上手く返すことも、Aの表情を見ることも、何も出来なかった。
そうか、これは拒絶なんだ。
俺への天罰なんだ。
面会も、連絡も、出来たかもしれない。
そもそもAはダディが連絡を禁じているという事実さえも知らなかったんじゃないか？
幼い頃、俺が一人で泣いていると、Aは何も言わずに側にいてくれた。
俺が泣き止むまで、ずっと。
まるで「一人じゃないよ」って言われてるみたいで、心が温かくなったのを覚えている。
だが、Aが一人で苦しんでいる間、俺は何をしていた？
また誰かを失うことが怖くて、現実から逃げて。
一度でも顔を見たら離れることが出来ない気がして、少しでも早く忘れようとした。
でも一人でいることには耐えられなくて、荒れた俺は……
いや、これ以上は思い出したくもない。
俺は馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
もしAが二度と帰ってこなかったら、どうなっていたんだろうか。
考えるだけでも恐ろしい。
「……神宮寺さん？」
「えっ……何だい？」
「あの……私、ただ、本当に……神宮寺さんに、神宮寺さんのお仕事にご迷惑をかけたくないんです。
夢を途中で諦めてほしくないんです」
そうやって俺の心を見透かす。
そうやって自分よりも他人を気遣う。
そこが、Aの長所でもあり短所でもある。
きっと本気で俺のことを心配してるからこんなことを言ってくれるんだろう。
だけど、その全てを信じることが出来ない俺がいる。
ホント、性格悪いなあ、俺。
俺がAをこんなにさせたんじゃないか。
なのに
なんで、そんなに悲しそうに微笑むんだ。
なんで、そんなに辛そうな瞳で俺を見つめるんだ。
勘違いしそうになる。
「……ありがとう、レディ。
じゃあ、1つだけワガママ言ってもいい？」
「何ですか？」
「車椅子、俺に押させてくれないかな」
「……はい、どうぞ」
今の俺には、Aの微笑みが本心かどうかさえもわからないけど。
その微笑みくらい、俺にも守らせてよ。
やっぱり俺は、この感情に蓋をしたくないんだ。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
