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神宮寺財閥や聖川財閥にまでは及ばないが、それらとほぼ肩を並べるほどの大財閥、桜糀財閥の一人娘にして次期総裁。
兄貴の口からそんな名前が出てくるとは思ってもいなかった。
確かに昔から知っている子だ。
というか初恋の相手だけど。
「本当に……Aが?」
「ああ、悪い話ではないだろ?」
「まあ……、でもいつから?」
「お前らが物心つく前くらいからだそうだ」
Aは俺より一歳年下で、パーティーでよく一緒に抜け出して遊んだりした。
何より俺の数少ない理解者の一人だった。
兄妹みたいに一緒にいさせられてたのは、成長してお互いが許嫁だと知ってからも嫌がることがないようにするためか。
今考えれば合点がいく。
「でもAは持病の治療でアメリカにいるんじゃ……」
「完治してもう動けるらしい。
あと少しの療養なら日本でも出来るからな。
2ヶ月後には帰国する、との知らせが来た」
生まれつき病弱だったAは14歳の時に呼吸器官の持病が悪化した。
当時、日本での治療は厳しかったためAは渡米治療を余儀無くされたが、それ以来、ダディによって俺はAと会うことを禁じられていた。
「……何でダディは俺とAを会わせなかった?
普通なら数回は俺をアメリカに出向かせるだろ?」
「そこまでは俺にもわからないが……。
國春さんと何かあったんじゃないか」
神宮寺家と桜糀家は昔から仲が良い。
特に俺のダディとAのダディ___桜糀財閥現総裁、國春さんは学生時代からの親友だったと聞く。
あの頃のダディなら、何より先に國春さんに相談するだろう。
「ここからが本題だ。
Aさんが帰国して1週間後、桜糀財閥がパーティーを開くらしい。
招待状が届いた」
「それが今回呼び出した理由か。
俺にも出席しろって?」
「簡潔に言えばそうなるな。
正式に許嫁として出席してほしいとの要望だ。
Aさんの体調も考えるとそこまで大規模なものではない。
お前の仕事にも差し支えは無いはずだが……早乙女社長には俺から話しておこう」
「わかったよ。
詳しいことが決まったら連絡して」
この日は兄貴と一緒に食事もしたが、俺に楽しむ余裕なんて無かった。
初恋の相手が、実は許嫁。
そんな彼女に、5年ぶりに会える。
いや、会わなくちゃいけない。
ほんの少しの幸福感と溢れ返るような罪悪感に心が押し潰されそうになった。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです!続きがとても気になります!更新楽しみに待ってます! (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:儚霧 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年2月14日 1時