＊１６＊ ページ17
「お久しぶりね、レンくん。
見ない間にすっかり大きくなって……」
「本日はお招き頂きありがとうございます。
お久しぶりです、楓さん」
楓さんに招待されて桜糀邸へとやって来た。
Aは今日、定期検診で不在だそうだ。
夜空の一部を切り取ったようで
引き込まれそうになるほど黒い髪と瞳
雪のように白く透き通った肌
楓さんはAによく似ている。
容姿も、声も、性格も。
20年と少し経てば、Aもこうなっているんだろうか。
その時、その隣には＿＿＿＿＿＿。
「そんなに畏まらないで」
「……はい」
「悩んでること、あるんでしょ」
そうやって楓さんも俺の心を見透かす。
Aのそれもやっぱり母親譲りなのだろう。
ほんと、嫌なところまでそっくりだ。
「まあ、そんなの私の憶測でしかないんだけれどね。
本当は私があなたに話したいことがあって呼んだのよ」
「話したいこと……？」
「ええ、私とあの人＿＿＿＿＿國春さんのこと」
「実は私たち、政略結婚だったの」
18歳の誕生日パーティーで突然お父様にあの人を紹介されてね。
私は所謂深窓の令嬢で男性と接する機会なんてそれまで無かったから、あの人の一挙手一投足がとても紳士的に見えて。
お父様にあの人の印象を聞かれた時にそう答えてしまったの。
よくよく考えればわかることなのにね。
結婚相手だと告げられた時には絶望したわ。
まだ恋も経験したことさえないのに、20歳近く歳の離れた方と結婚するなんて、って。
幸いなことにあの人は本当に素敵な方で＿＿＿
あら、こんなこと言ったらただの惚気ね、ごめんなさい。
楓さんの話に、俺は素直に驚いた。
あんなに仲睦まじい二人が政略結婚だったなんて。
「私たちみたいに後から芽生える愛だってあるわ。
でも、あなたたちは既に想い合っているはずなのに……見ていて歯痒くて」
「……好きだから、どうすればいいかわからないんです」
「なら、あの子の側にいてあげて。
あの子は誰に似たのか、本心を隠してしまうから。
あの子が言えるようになるまで、寄り添って。
……大人の癖に、我が儘言ってごめんなさいね。
親としては、娘に幸せになってほしいの」
「……俺は、Aを幸せに出来ますかね」
「ええ、きっと」
レンくん、昔のあの人にそっくりなんですもの
そう微笑む楓さんはとても幸せそうな表情だった。
俺も、なれるだろうか。
楓さんに寄り添い支える、國春さんのように。
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儚霧(プロフ) - タナトフィリアさん» コメ有難うございます。ネタはあっても文章が纏まらないので死ぬほど亀更新ですが、精一杯頑張らせて頂く所存です。これからも宜しくお願いしますm(__)m (2018年7月8日 16時) (
レス) id: 4f1bc6d88e (このIDを非表示/違反報告)
タナトフィリア - とっても面白いです！続きがとても気になります！更新楽しみに待ってます！ (2018年7月8日 13時) (レス) id: 41c9a6a89d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：儚霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月14日 1時
