* ページ5
.
男の人の指がこんなにも繊細に動くことを、わたしははじめて知った。
まずは耳に、首筋に。
申し訳程度に膨らんだ胸をたどって、臍をなぞる。
わたしは棒立ちで、彼は跪いていた。
身体にはギターの音が縄のように食い込み、がんじがらめとなって震える肌を、彼の指が愛でていく。
男性というと、すこし雑な印象があったのだ。
それは頭を撫でる父の手であったり、乱暴に腕を引くボーイフレンドの手であったり____________
「……ああ」
こんなふうに肌に触れられたことなんて。
「ごめんなさい」
膝の裏を撫でられた瞬間、口に咥えていたピックを落としてしまった。
叱られた子どものように涙声を出して許しを乞うが、彼は黙って微笑んだまま、離れていく。
わたしは泣きそうになって歯をくいしばる。
すると、ふいに近づけられた顔が。
「っ……ん」
鼻と鼻、頬と頬。
睫毛と睫毛。
それなのに、唇は……合わせてくれない。
いつの間にか、ギターの音が止んでいた。
舞台の上からは、ふたりの美しい男がこちらのようすをじっと伺っていた。
まっすぐなひとみだった。
わたしはようやく、名も知らぬ三人の男になんとも滑稽な姿を晒しているのだと理解し、冷静になると、思わずしゃがみこんでしまった。
裸の尻に、自らの長い髪が垂れる。
「A」
彼が口を開いた。
「五年後、おまえがきちんと大人になったら……
もう一度ここにおいで」
わたしはふいに涙を落とし、彼を見上げる。
「忘れるなら忘れてええ。でも、置き去りにできひんようなら……そのときは、Aが望むものをあげる」
「今じゃ、だめなの?」
「今は、まだ」
「それはわたしが子どもだから?」
「いや、
これは猶予やで」
彼のあの指が、丁寧にわたしの涙を掬う。
それだけでまた、呼吸が乱れた。
剥き出しの肌が粟立つ。
「一度だけ見逃したる。
でも、次に会ったときは……」
.
.
「A、すこし大人びたんじゃないか」
駅前の喫茶店。
一年ぶりに顔を合わせた父は、フルーツサンドを頬張るわたしを見てひとこと、そう言った。
わたしはなんだか、父の顔を見ることができなかった。
to be continue.
175人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べに(プロフ) - ココナッツさん» うわあああああココナッツさん!ありがとうございますわたしも好きです(T T) (2018年3月14日 18時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - うわああああべにさんっ!うわああああ…(ワケわからなくてごめんなさい、汗)…好きですっ! (2018年3月14日 15時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べに | 作成日時:2018年3月13日 0時