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壁の向こう側に居る彼のことを、わたしはなにひとつ知らない。
顔も、姿も、名前も、声も。
唯一わかっていることは、彼の待つこの部屋の名称だけだ。
イエローベル。
檸檬の種類のひとつらしい。
「ありがとうございました」
１時間後、ピックをカウンターに返し、あの金色のカフスボタンを付けた手に代金を渡す。
不思議な店だと、つくづく思う。
容姿不明の店員とギターで会話をするという、なかなかマニアックな嗜好ではあるが＿＿＿＿＿主に女性客を中心に＿＿＿＿＿ひっそりと人気を集めているという。
忙しい日々の癒しか、単なる休息か。
それとも、わたしのように・・・
店に立ち寄るのは日曜の午後３時と決めている。
どういうわけか、この時間に訪れると必ずイエローベルの部屋が空いているから。
翌週もまた、おなじようにその店を訪れた。
受付を済ませ、カフェオレを注文し、店の奥へ向かう。
イエローベルのとびらには今日も『Open』の札が掛かっており、わたしはそれを『Close』に変え、しずかに部屋に滑りこむ。
E、A、D、G、B、E・・・
挨拶もそこそこに、さっそく音を鳴らしていく。
C7
沈黙を置き、返ってくる音。
Esus4、E
ふたつ続けて。
A、Bm7
返すと、
Gadd9
ほとんどアルペジオのように。
なんだか、今日の彼はすこし＿＿＿＿＿＿＿
考えながら、わたしはまた床に座りこんだ。
壁に耳をつけ、目を閉じる。
彼が、すぐ近くにいるような気配。
あなたもまた、わたしのようにこの壁に触れているのだろうか。
「・・・ぁ」
思わず、わずかに声を上げてしまった。
Bm7(b5)
ひりひりと肌を焦がすような、あんまり情熱的な弾き方に・・・感嘆の息しかこぼれない。
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べに(プロフ) - ココナッツさん» うわあああああココナッツさん！ありがとうございますわたしも好きです(T T) (2018年3月14日 18時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - うわああああべにさんっ！うわああああ…(ワケわからなくてごめんなさい、汗)…好きですっ！ (2018年3月14日 15時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年3月13日 0時
