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6話 ページ6

市民のもっともな怒りの声を聞くだけで、真上にあったはずの太陽がいつしか沈んで夜になっている。
目まぐるしい早さで終わる一日にくたくたになりながら、重たい足取りで自分の借りた家に帰る日々だった。

だが今日は、少し違う事が目の前に1つ。

道に迷っているのか、辺りを見渡す素振りの男が居る。
綺麗な金髪が目を引いたが、それより目立つのは彼の立ち振る舞いだ。服はそこそこ綺麗で、道に慣れてない様子から外国人だろう。そして手ぶらは彼が商人ではなく観光客である事を表している。
こんな定期便も減っている時期に珍しい…、いや、もしかしたら衰退していくこの街の話を知らなかったのかもしれない。

可哀想な人。早く出て行かないと、今度は他国へ帰る船すらなくなるかもしれないのに。

なんて心の中で憐れみながら私はさっさと家のベッドを求めて角を曲がろうとしたのだが、彼がふらりと廃墟群へと向かうのでギョッとした。そこは地元民でも近づかない危険地帯、スラムのへと続く未知だ。

「ちょっとアナタ!そっちは行っちゃだめ」

咄嗟に手を取ると、驚いたように男が振り返った。だが私も彼の顔から目が離せない。
何年と経っていようと間違えようがない。

「…アリババ?」
「え?」

それは、記憶の中よりずっと大きくなった、今の今まで探していたもう1人の兄だった。疲れなんて一気に吹き飛んだ、信じられない!とか嬉しい!とか色々な感情のまま彼に抱きついていた。ギョッと身体を強ばらせる彼に気づきもせず、私は掴んでいた手をブンブンと振る。

「アリババ、アリババでしょ!!今までどこ行ってたの!!」
「え、えっと……」
「ね、私よ!私のこと、覚えてる!?」
「っも、もちろんですよ〜!」

敬語?やっと違和感に気づいたのはこの時だ。
ほんの少し動揺して見せたアリババだったが直ぐに手を後ろ頭に当てると、ニコニコと愛想のいい笑みを浮かべる。

「いやだな、こんな可愛いお嬢さんを俺が忘れるわけないじゃないですかぁ!」
「……ねえ、本当に私が誰だか分かって言ってるの…?」
「え?ええ、ですから、また会えて嬉しいなあ!いやあこれは運命ってやつですかね〜!」

絶望した。覚えていないのだ。
覚えている?なんて確かに聞きはしたけどまさか、忘れられてるなんて思わないじゃない……

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あまね(プロフ) - すきですすす (10月11日 20時) (レス) @page6 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - eggちゃんさん» 暖かいお言葉ありがとうございます!またマギにはまって書き始めちゃいました😂以前と少し系統が違うかもしれませんが、楽しんで貰えたら幸いです‼️ (2022年2月14日 1時) (レス) id: 1e945b1125 (このIDを非表示/違反報告)
eggちゃん(プロフ) - むすさんの新作待っていました!!お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2022年2月7日 18時) (レス) id: e88a2b5ecc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むす | 作成日時:2022年2月5日 1時

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