3話 ページ3
貿易停止の書簡はあの後すぐにシンドリアに送られた。なんでも最近よく王に謁見する男、王のお気に入りである経済アドバイザーが急かしたんだそう。
本当に経済アドバイザーなら、こんな国の首を絞めるような決断させるはずが無い。
…これからこの国は、どうなるのだろう。
あの時どうすれば私は止められた？
もっと他に方法があったんじゃないか？
自分の無力さが嫌になる。
夜のバルバットは蒸し暑さが残るものの、冷たい潮風が吹いて心地いい。王宮周りの煌びやかな貴族街を抜け、市民街を港をとどんどん寂れていく景色を私は進んでいく。
そして、今も荒くれ者が出入りしている見るからに怪しい廃墟の建物群に足を踏み入れた。
ここは、かつて海賊被害にあっていた名残だと誰かから聞いたことがある。港に海賊船が来るのを見張る為の監視塔だったのだと。それが今では一帯が反政府組織のアジトだ。
昔は小さな家で肩を寄せあって寝てたのに、遠い所に行ってしまったものね。
通り過ぎる人達が頭を下げだすのが嫌で私は彼らと目も合わせずに足早に監視塔の中に入った。そうして最上階まで駆け上がり、目当てのドアを強く開ける。
バンッ、と勢いよく。
ベッドに座っている同じ色の目が、ギョッと私を見つめていた。彼が驚いているのは急にドアが開いた衝撃か予定外の来訪にか、はたまたその両方か。
「よお…どうした、何かあったのか？」
「…別にないよ。なきゃ来ちゃ駄目なの？」
「誰もんな事言ってねえだろ」
カシムは怪訝そうに顔を歪めながらも、咥えていた煙草をロウソク台に擦り付けた。立ち昇った煙が窓の外に吸い込まれていく。
まだ私がこの苦々しい煙を吸って咳き込み続けたのを気にしているのだ。小さい時のたった1回の出来事なのに、兄はあれから1度も目の前で煙草を吸わない。
でも勿体ないとは思っているようで、
「はぁ……火つける前に来いよ。あとノックしなさい」
「なんでみんな私が来ると溜息すんのよぉ」
「おいさっきからなにいじけてんだよ」
不服げな兄がそう言うのも最もだ。
急に来たと思えばが噛みつくだけ噛みつくなんて、当たり屋もいい所だと、頭では分かってるんだけど。
でも今の私は自分の中に渦巻く無力さと情けなさに呑まれていて、もう限界だった。現実から逃げたくて、兄の部屋のソファーになだれ込んで、ふて寝を決めこむ。
困ったようなため息がまた聞こえてくる。
「溜息やめて」
「女王様か」
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あまね(プロフ) - すきですすす (10月11日 20時) (
レス) @page6 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
むす(プロフ) - eggちゃんさん» 暖かいお言葉ありがとうございます！またマギにはまって書き始めちゃいました😂以前と少し系統が違うかもしれませんが、楽しんで貰えたら幸いです‼️ (2022年2月14日 1時) (レス) id: 1e945b1125 (このIDを非表示/違反報告)
eggちゃん(プロフ) - むすさんの新作待っていました！！お身体に気をつけて更新頑張ってください！ (2022年2月7日 18時) (レス) id: e88a2b5ecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むす | 作成日時：2022年2月5日 1時
