第二十一話 ページ21
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「せや‼ 来週の火曜仕事⁇」
「休みだよ、でもミーティングがあるから午前中は職場にいる」
「午後からは何か用事ある⁇」
「ないよ〜」
そう答えると「よっしゃ‼」と嬉しそうな顔をしてスマホを弄り出した。
そして探し当てた何かを私に見せる。
「ほなこれ行かへん⁇ 夏といえばやっぱ祭りやろ〜〜‼」
それは全国でも有名な、この地域の夏祭りの1つ。
毎年大勢の人がこの祭りに行ってニュースにも挙げられている。
特に花火が有名で、こっちに来てからずっと行きたかった祭りだ。
もちろん、臣が全力で嫌がったためテレビで見てた。
「行く‼ 行きたい‼」
「良かったーほな行こか‼ めっちゃ楽しみやわ」
念願の夏祭り、楽しみが1つ増えた。
その風景を思い浮かべてニヤけていると、顔に冷たい水滴が当たった。
「雨降ってきた」
「本間やんAちゃん走るでー‼」
先に走り出した侑君が私の手を引いた。
速い速い‼ そう叫ぶと振り返ってやんちゃな子供みたいな笑顔を見せてきた。
夜中の1時過ぎ。
20歳を過ぎた大人2人、全速力で走ってる。
変なの。
でもなんだか楽しくって私も声を立てて笑った。
「うわーーー、びしょびしょなってもーたな」
「一気に降ったね」
走ったものの結局2人揃ってずぶ濡れになった。
早く体を拭かないと風邪をひいてしまう。
送ってもらっておきながら、このままさよならなんて絶対出来ないし。
「取り敢えず中入って」とドアに手を掛ける。
しかしきっぱりと断られた。
「あかんあかん俺はこのまま帰るで」
「いやそれこそあかんよ、風邪ひいちゃう」
すると侑君は雨に濡れた髪を掻き上げて、ハァーーーー。とわざとらしく溜め息をついた。
「Aちゃん、無防備に男を部屋に上げたらあかんよ、好きな子の部屋なんか上がったら俺絶対我慢でけんもん」
あ、っと言葉の意味を理解して手にかけていたドアノブからパッと手を離す。
途端意識してしまって、ドキッと心臓が鳴った。
「ふっふ、分かったら早よ中入り。大事にしたいねんAちゃんの事」
ぽんっと頭に手を乗せて優しく微笑む侑君。
「あ、でも傘だけ貸してくれん⁇」と頼まれたから、玄関から傘を持って差し出した。
「ほなおやすみAちゃん‼」
そう言って最後まで笑顔で私に手を振る侑君は、雨の中傘をさして帰っていった。
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作者名:林檎 | 作成日時:2020年6月19日 16時