第十七話 ページ17
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「で? 佐久早がまた謝ってきたらどうすんの⁇」
仕事終わりの居酒屋にて、ジョッキを片手に黒尾が尋ねた。
「いやもうよりは戻さないよ」
これ以上臣と付き合っていくのは無理だし。
「この6年間なんだったんだろうなあ」
うわ、改めて口に出してびっくりした。
私達6年も付き合ってたんだ。
高2の16歳から社会人2年目の22歳。
6年もの関係に終止符を切ったというのに、今の私の気持ちは不思議と穏やかだ。
悩みも不安も苛立ちもない。
解放された気分とも言える。
「小学校卒業してるな」
「中学生になるんだねェ」と、意味の分からない事を言いながら黒尾がジョッキを私に向けた。
「んじゃ、乾杯しなおしますか、Aの卒業を祝ってカンパーイ‼」
黒尾の掛け声でジョッキをぶつける。
それを合図に私は普段の3倍は飲んだ。
私は酔って泣いたり、口が悪くなったりテンションが上がったりはしない。
ただ眠くなる。てか寝る。
「その辺にしといたらどうですかAサン。明日休みだからって飲み過ぎ」
うとうとし始めた私の手からジョッキが奪われた。
睡魔と葛藤しながら、頭の中では臣の事を考えてしまっていた。
これからあいつちゃんと自炊できるのかな。
洗濯とか、ゴミ出しとか、掃除はするだろうけど。家事とかしてるとこ見た事ないし。
それだけが気がかりだった。
でも私はもうあの家には戻らないよ、新しい家で私は私を1から始めるって決めたから。
そんな事を考えているとスマホが鳴った。
緩慢な動きで手に取り画面を確認すると、�狄鱈瓩班充┐気譴討い襦�
「…」
「出ないの⁇」
「出ない。」
そもそもなんでいつも別れた後連絡してくるのか、会いにくるのか。
好きだから⁇ 別れたくないから⁇
まさか、臣はただ環境の変化が嫌いなだけでしょ。
生活を回してくれて、人肌恋しくなったら寄り添ってくれる相手がそばにいる。
それを失うのが嫌なだけでしょ。
そうして私は着信を切った。
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年6月19日 16時
