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ガチャガチャと鍵を開ける音で目を覚ますと、いつもとは違う目線の高さで、宇髄に背負われていることはすぐに分かった。
『ね〜、なんでこの家なの。
自分の家に帰らしてよ〜。』
起きて早々元気の良い私に、吹き出した宇髄が部屋のドアを開ける。
「帰すわけねーじゃん。
俺だってこの勝負、本気だし。」
『しょうぶ?
そんなの、最初から私の勝ちじゃん。』
ドサッと降ろされたのは、ベッドではなく、ソファーの上。
タオル、Tシャツ、スウェット…の順番でポイポイと私の膝に置かれていく。
「よく思い出して。この勝負のルール。」
不敵に笑った宇髄が、頭を冷やせと言わんばかりに浴室へと私を促した。
惚れたら負けのゲームにルールなんて無いのに。
宇髄が本当に入社当初から私のことが好きなのだとしたら、このゲームは私の勝ちだ。
その後は……?
まさか自分が宇髄に惚れるなんて、考えてもみなかったから、この後のことは気にしたこともなかった。
『なるようにしか、ならないよね…』
この前も貸してもらったぶかぶかのTシャツとスウェットに身を包めば、もう既に覚めかけた筈の酔いが戻ってきたかのように早まる心臓の音。
入れ替わるようにして浴室へと消えた宇髄の温もりが残るソファーに身を沈めてウトウトしていると、ドライヤーの音で目が覚めた。
パタパタとスリッパの音を鳴らして部屋へと戻ってきた宇髄は、私に構うことなくベッドにダイブした。
「思い出した?」
満面の笑みでこちらを向いた宇髄に首を横に振って見せると、宇髄はベッドを軽く叩いて「おいで。」と手招きした。
「教えてやろーか?」
後ろから抱きしめるようにして私を包んだ宇髄が、私の髪を撫でる。
『惚れたら負け、でしょ?』
「そう。Aがな。」
『なんで?宇髄は?』
やっぱり…と笑った宇髄が、私の耳に優しく口を寄せた。
「こんなチャンス、2度とないと思ったよ。
俺がAを落とすだけの勝負なんて。」
確かにそうだ。
最初からこれは、私が落ちるか落ちないかの勝負だったんだ。
「だから最初、俺の気持ち分かってて言ってんのかと思ったわ。」
『それは…!』
「あーうん、分かってるよ。
“図らずして”だろ?」
宇髄は静かに頷いた私の顔をくるりと自分の方へ向けた。
「で?勝敗は?」
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羽糸(プロフ) - cocoaさん» コメントありがとうございます!!私も書いていて楽しすぎました(笑)天元ならではのラブゲームだったかな、と思ってます!また読みに来てくださいね🍰🍰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» ありがとう!!こんな彼がいたら実際ゲームどころではないよね…ひよちゃんをドキドキさせられて嬉しい!私は満足です!!!実弥さんの方はじっくり書いてますが、なかなかムズカシイ!ひよちゃんの新作も楽しみにしております🥰🥰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - 読んでいて、楽しすぎました‼︎こんなラブゲーム、天元とならしてみたい笑 今後も楽しみにしてます(^^) (2021年11月4日 15時) (レス) @page23 id: e19d285429 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!! てんてんの包容力と器の大きさに溶かされました。いくつかのセリフも刺さった……終始ドキドキさせてもらったラブゲーム、ご馳走でした!! 実弥さんの方も、マイペースで頑張って下さい!! (2021年11月4日 10時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - すみっことかげさん» コメントありがとうございます!余裕たっぷりの天元、最高ですよね!こんないい男いたら即惚れますわ…(笑) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月28日 20時