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「ほら、もっとこっち来いよ。」
明かりを落とした部屋の中は、やけに生々しい音が目立つ気がする。
ベッドが軋む音、シーツと体が擦れる音、互いの息遣い…
世界がここだけ切り取られたような感覚は、甘ったるくて温かくて、居心地が悪かった。
宇髄の胸に顔を埋めれば、それだけで満たされていく違和感が微睡みも全て蹴散らしてしまった。
顔を上げて見上げれば、すぐ近くにあった唇が、探り当てるように私の唇に重なる。
ゆっくりと確実に深くなっていく口付けに酔いしれて溺れるように潜り込ませた右手は、胸板から脇腹、腰を経由して、ウエストに沿って隙間なく一周する太めのゴムの縁に指先を立てた。
その指を掬い上げるように掴んだ大きな手が、布団から私の腕を引っ張り上げた。
「イケナイ手だな…
嫌いじゃねーけど、今日はダメ。」
困ったように笑う宇髄の吐息を含んだ声が、今まで我慢してきた感情を存分に刺激する。
『どうして?』
悪戯な笑みを浮かべて見上げれば、宇髄は瞳を揺らしてさらに眉を下げる。
ずっと、この顔が見たかった。
いつも余裕
ゾクゾクするような好奇心が膨らんで、私は再びその造形美なベルベットの唇に舌を這わせた。
「…ダメだって、本当に。」
『やだ。やめてやんない。』
そう言って、布団の中へ入れようとした手は、更に強い力で阻止されてしまう。
「こんなの、フェアじゃない。
頼むから言うこと聞けって…」
『……やだ。』
聞き分けのないフリをして、反応を楽しんでいることにようやく宇髄は気がついたようだ。
深い溜息の末、少し体を起こした宇髄が、私に布団を巻き付けるようにして、身動きが取れないほど強く抱きしめた。
「はいはい、ヤダしないで。
今度たっぷり可愛がってやるから、今日は大人しく寝ること!」
息苦しさで、何も考えられない。
キス以外何もしていないのに、今までのどの瞬間にもこの時間が
まさかこの色男、知らない間に確実に私の心を掴み始めてる…?
『……分かったよ。
その代わり、寝てる間もずっと抱きしめてて。
離したら、絶対に惚れてあげないから。』
「ははっ、余裕。
暑くて離れたくなっても絶対離してやんねーよ。」
ふわりと剥がされた布団の下で広げられた分厚い胸に、私は身を沈めた。
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羽糸(プロフ) - cocoaさん» コメントありがとうございます!!私も書いていて楽しすぎました(笑)天元ならではのラブゲームだったかな、と思ってます!また読みに来てくださいね🍰🍰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» ありがとう!!こんな彼がいたら実際ゲームどころではないよね…ひよちゃんをドキドキさせられて嬉しい!私は満足です!!!実弥さんの方はじっくり書いてますが、なかなかムズカシイ!ひよちゃんの新作も楽しみにしております🥰🥰 (2021年11月5日 8時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - 読んでいて、楽しすぎました‼︎こんなラブゲーム、天元とならしてみたい笑 今後も楽しみにしてます(^^) (2021年11月4日 15時) (レス) @page23 id: e19d285429 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!! てんてんの包容力と器の大きさに溶かされました。いくつかのセリフも刺さった……終始ドキドキさせてもらったラブゲーム、ご馳走でした!! 実弥さんの方も、マイペースで頑張って下さい!! (2021年11月4日 10時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - すみっことかげさん» コメントありがとうございます!余裕たっぷりの天元、最高ですよね!こんないい男いたら即惚れますわ…(笑) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月28日 20時