最終章 仲間 ページ25
｢姉さん｣
一人残った翔君が靴を履きながら言った。
｢もっと自分のこと大切にして。･･････お願いだから｣
切ない溜息を吐いた翔君は、私に向き直ると一瞬泣きそうな顔をした。
｢･･････姉さん、触られるの大丈夫？｣
どういうことだろうと思ったけど、翔君にはなんの抵抗もなかったから頷いたら、手を握られた。でもそれだけではなく、緩く抱きしめられて、私は目を見開いた。
｢翔君･･･････？｣
｢男のこと、今ちょっと苦手になってるでしょ？ 今日一日見てて分かった｣
翔君･･････相変わらず鋭いね。
今日、見知らぬ人とはすれ違うくらいで、後は新しい大家さんにご挨拶した程度だったのに、それでわかるなんてすごい観察力だ。
｢気を許せる人間が今いなくなってて、苦しいのはわかるよ。･･････でもさ、俺らがいるでしょ？ 俺らのぬくもりで良ければみんな喜んで飛んで来るから。 ･･････姉さんのこと、姉さん以上に大切に思ってる人間がいること忘れないで。頼むから、粗末に扱わないで欲しい。･･････そんなことしたら、智君が悲しむから･･･････｣
悲しむ？
頭の中に、楽しそうに智君の背中に抱き着く女の子の映像が過ぎった。
｢･･････智君、もう私のこと好きじゃないんじゃないかなぁ･･･････｣
｢え？｣
翔君が身を起こして私を覗き込もうとしたけど、私は顔があげられなかった。
｢姉さん？ どういうこと？｣
体を揺すられる。
黙っていたら、翔君が息をのむのが分かった。
｢･･････観たの？｣
放送のことを言っているのだとすぐにわかった。
私が頷くと、翔君は顔をしかめて天を仰いだ。
その様子で、相葉君が録画をなくしたと言っていたのは嘘だって分かった。私に見せないように、気を遣ってくれてたんだ。
ということは、やっぱりみんなもあの映像を見て何か思うところがあったっていうことだよね。
私は冷水を浴びせかけられたように体が冷えた。
涙がこぼれた。
翔君が慌てたように言った。
｢待った！ 誤解しちゃいけないと思ったから、目に触れさせないようにしただけだよ？｣
｢誤解？｣
｢そう、誤解。･･････あの子はただの下宿先の師匠の娘さんで、俺も会ったことのある子だよ｣
｢じゃあ一緒に住んでるんだ･･････｣
翔君は驚いて目を見開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 672人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とも(プロフ) - 感情移入してしまい…離れている間が辛かった（笑）主人公ちゃんは年上を気にし過ぎて想いを言葉にしなくて…智くんも口数が少なすぎて〜ちょっと歯がゆさがありましたが最終的には幸せに慣れてめちゃくちゃ嬉しかったです。 (2020年5月9日 10時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - みるくプリンさん» みるくプリン様こんにちは！評価100に思わずにやけました。嬉しいです〜。私自信が欲する萌えで、みるくプリン様も萌えてもらえて、幸せです。頑張りますね！ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月28日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - にーにーさん» にーにー様こんにちは！同エピにびっくりしています。さぞや心細かったことでしょう。大変でしたね。作風気に入って下さってありがとうございます。嬉しいです。ロスを少しでも癒せれば幸せです。今後ともよろしくお願いいたします。私も冬のにおい聞き返してみます。 (2019年9月28日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - 完結お疲れ様です！最後の方は、何度も泣きながら、じっくり読ませて頂きました。主人公ちゃんや智君はもちろん、翔くん達も素敵すぎて、もう大好きです！(突然の告白)これからも頑張って下さいね！あー☆評価100くらい入れたい位好きです、ホントに。 (2019年9月28日 3時) (レス) id: 7db76bcf0c (このIDを非表示/違反報告)
にーにー(プロフ) - 初めまして！素敵な作品をありがとうございました！もう智君ロスです…私も以前 彼が留学してる間に空き巣に入られた事があり 同エピにビックリ！最後までお話に引き込まれました。aoさんの作風とっても好きです！彼らの曲 冬のニオイの雰囲気がぴったりに感じました！ (2019年9月26日 3時) (レス) id: 46fd7f8dbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年9月2日 22時
