玄関 ページ30
あぁ････キスしてる。
幸せ過ぎて苦しい。
｢ごめん。･･････口紅薄くなったかも｣
言って、私の唇を見つめる大野さんの方の唇は、ぷるっと艶めいていて、私よりよっぽど魅力的だった。
｢そんなにとれてねぇか。良かった｣
｢大野さんの唇も赤くなってないよ｣
二人で目を合わせて、くすぐったく笑いあった。
｢行こ。朝飯食ってないから腹減った｣
｢うん！ モーニングからですもんね。･･････大野さん｣
｢なに？｣
綺麗な瞳がこちらに向けられ、そこに私だけが映る贅沢に感謝したくなる。
｢今日はありがとうございます｣
すごく会いたかったら。
大野さんが今日誘ってくれたことが本当に嬉しかったの。しかも、私のしたかったこと全部しようって言ってくれた優しい気持ちが幸せ過ぎて。どうしても御礼が言いたくなった。
大野さんは困ったように眉を寄せ、私から視線を外してドアノブを掴んだ。
｢･････行こうよ｣
困らせちゃったかな。
大野さんは優しい人だから、きっとこのことにそれほどの気負いは感じてないんだと思う。当たり前に出来ちゃう人なんだ。だから御礼とか言われたらどうしていいかわからないんだと思う。
あんまり御礼を言いすぎないようにした方がいいのかな。
もしかしてさっきのキスも、私がしたそうなのに気付いてしてくれただけなのかも。
はしゃぎ過ぎちゃってる自分を反省して、大人しく靴を履いて外に出た。
･････想いのボリュームの適正値がわからないや。
まだ少し朝の匂いが残ってる街を、二人で駅に向かって歩くのは、不思議な心地だった。
今日は金曜日。学校に向かっている学生や、この時間でもまだ通勤に向かう人々がいて、そんな中をのんびり、遊びに行くために歩くというのは贅沢なことだった。
今日の大野さんは上下とも黒いズボンとＴシャツを着ている。
相変わらずラフな格好なのに、びっくりするくらいかっこよかった。こんなに黒が似合う人、見たことがない。
ほのかに漂う色気がすれ違う女性を振り返させていることに本人が何一つ気付いていないことも凄いと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 667人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - cocoroさん» cocoro様、わお！素敵なコメントありがとう〜！嬉しいです！やる気出ましたよー！まだしばらくは頑張れそうだから今後もお楽しみに！よろしくお願いいたします！ (2019年5月3日 9時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんありがとう〜。動じなくって一言の重みがある。そうなんですよね〜、そこに惚れてるのです。こちらこそいつもありがとう！励みになってるよ。次も萌えられるよう頑張るね！ (2019年5月3日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - mizunaさん» mizuna様、恐れ多い最高の褒め言葉をありがとうございます。拙い文章で、まだまだ切磋琢磨が必要ですが、自信になります。ありがとうございます！私の理想と一緒で良かったです！これからもよろしくお願いします。 (2019年5月3日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - kikiさん» kiki様いつもありがとうございます！かっこいいのとゆるふわ、そうです、それが書きたくて。うふふ。令和も楽しみながら作って、自身も皆さんも癒せるといいなって思います。これからもよろしくお願いします！ (2019年5月3日 8時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさ〜ん。もう「aoさんの大野さん」のない生活は考えられないよ。令和もよろしくです。aoさんが書き続ける限りずっと読者してます。 (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年4月18日 13時
