8話 ページ46
午後1時半。
穏やかな小春日和。
きらめく遠くの海を時折眺めながら、おばあちゃんと新聞を広げてそこでツクシの袴をとる作業に専念した。
一生懸命やってるのに、やっぱりおばあちゃんの手際は早かった。
私は感心して言った。
｢魔法の手みたい｣
おーちゃんが近くで寝てるから声をひそめて話す。
｢何年生きてると思ってるんだい。毎年毎年やってたらそりゃあ早くもなるってもんだよ｣
｢毎年？｣
｢こんな田舎にいたら、一年なんて同じことの繰り返しさぁ。でも繰り返すから変化が見つけられて楽しいんだよ｣
｢･･････繰り返すから楽しい｣
私は大事に思えるその言葉を深く噛み締めた。
｢こんな風に、今日みたいにね｣
ふふっと笑ったおばあちゃんに、私は改めて御礼を言った。
｢今日も来れて、嬉しかったです。･･････なんか、実家みたいに居心地良くて、落ち着くから｣
私がそう言うと、おばあちゃんは寝ているおーちゃんをちらりと見ておかしそうに小さく笑った。
｢あそこで寝てんのなんか、自分ちと勘違いしてんじゃないのかい？｣
口をちょっと開けて、折り畳んだ座布団を枕に平和な様子で寝ているおーちゃん。
私も笑ってしまった。
｢またおいで？｣
｢はい。･･････今度は泊めて下さいね｣
｢おやまぁ図々しい。わかったけど、急に来ちゃだめだよ。布団干さなきゃダメだからね。･･･････夏用も冬用もどっちも余分があるからいつでもいいよ｣
｢･･････うん｣
もうすぐ桜が咲くんだよと言って、おばあちゃんは庭の木を見上げた。
うららかな春の一日。
私はこの景色を一生覚えているだろうなと思った。
帰り際、昨日おーちゃんが描いた絵を見た玄さんが、わしのトラックにも描いてくれよと言い出して、おーちゃんは寝起きで油性マジックを握らされ、状況が掴めずに暫くぼーっとしていた。
でも金色のボディを目の前にして、ここに描くの!?もったいねぇ、カッコイイのに。って描くのを躊躇ってた。
でも玄さんから、海老食っただろ、返せこの野郎！って言われて、それは冗談に違いないんだけど、仕方なさそうに渋々荷台の横側に描いていた。
おーちゃんはよっぽど金色の軽トラが気に入ったみたい。
大漁旗に玄さんの似顔絵が描かれた絵を描いたおーちゃん。玄さんはそれを凄く気に入って、携帯でパシャパシャ写真を撮ってた。
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ao(プロフ) - kikiさん» kiki様こんにちは。主人公ちゃんいい子なんで、たまに黒くしよう黒くしようとしてるんですが、なかなか染まってくれません。恋人が素敵だからでしょうか。私も青色さんに綺麗な色にしてもらいたいです！ (2019年2月26日 16時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - もちろん、こちらも拝読致しております！主人公ちゃんの清く芯のある人柄が凄く素敵ですねー！こちらも見習う事が多々ありまーす。感謝の気持ちって、ホント大事ですよね。 (2019年2月25日 18時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - わー、cocoro様コメント嬉しいです。お元気でしたか。何度も読み返したくなるようなお話を頑張って作るので、是非遊びに来てくださいね。一緒に楽しみましょう！萌えてくださーい。 (2019年2月25日 9時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさん、お久しぶりです。またこの子達に会えて嬉しいです。私はこれからも、いやもしかしたらこれまで以上にここに糖分補給に立ち寄るであろうと思われます(笑)。また一緒に楽しませてください。 (2019年2月24日 20時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2019年2月19日 20時
