36 アダージョな海 ページ39
｢･････おーちゃん、これ引いてるのかな･････｣
｢え？ お、おぉ!? 引いてる、引いてるってそれ！ 巻いて！｣
｢ええっ！ どっちに!?｣
｢どっちってこっちに決まってるし！｣
おーちゃんが私の持ってる竿を後ろから支えて、リールを一緒に巻いてくれる。
何これ!? 重いよ!?
旅行二日目、私達は釣り船に乗って、沖釣りに出掛けていた。
船には私達以外にお客さんが10人いて、船長さんの話しぶりからして、どうやら私が一番初心者みたいだった。
昨日に引き続いて麗らかな天気で、絶好の釣り日和。
船は一度お昼前に港に戻る。昼からまた別のお客さんを乗せて出港する予定で、私達は午前と午後と、両方予約していた。
釣れたのはメバル。そんなに大きくないのに凄く重くてびっくりした。
それが続けて二匹釣れたんだけど、おーちゃんの方はまさかの開始1時間一匹も釣れなくて、だんだん尖っていく唇が、可哀相なんだけど可愛くもあって。
私はおーちゃんに宣言した。
｢もう釣り方は教えてもらってわかったから、こっからは真剣勝負ね。こっちのことは放っておいていいから。いい？今から口きかないよ？｣
｢なんだそれ｣
竿を片手に海を見ながらふふって笑ってるおーちゃん。
｢じゃあスタートね！ 私、こっちに離れてるから｣
本来おーちゃんは自由になれるから魚釣りが好きなのに、私がうろちょろしてたんじゃいつもの楽しみ方が出来てないんじゃないかって心配して、それでこの勝負を持ち出したんだけど、おーちゃんに背中を向けて反対側で釣りを初めて20分、早速後悔が襲ってきた。
同じ船に乗った釣り客の女の子が、おーちゃんに話しかけ始めたからだ。
女の子が着ている服は、有名釣り具ブランドの最新式のデザインという様子で、カラフルでお洒落な上に機能的だし、その他の装備品もバッチリ。 釣り雑誌の広告から抜け出て来たようだった。
以前におーちゃんと一緒に見た釣り番組に出てた女の子に似ているなって思ってたら、なんと本人だったからびっくりした。
｢えっ、あ？ んっ!?｣
おーちゃんも本人だって分かってびっくりしてた。
みんなもそのことに気づいて、船の上は一気に賑やかになった。
それはそう、釣り人にとってはアイドルみたいな存在だったから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 912人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - kikiさん» kiki様こんにちは。主人公ちゃんいい子なんで、たまに黒くしよう黒くしようとしてるんですが、なかなか染まってくれません。恋人が素敵だからでしょうか。私も青色さんに綺麗な色にしてもらいたいです！ (2019年2月26日 16時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - もちろん、こちらも拝読致しております！主人公ちゃんの清く芯のある人柄が凄く素敵ですねー！こちらも見習う事が多々ありまーす。感謝の気持ちって、ホント大事ですよね。 (2019年2月25日 18時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - わー、cocoro様コメント嬉しいです。お元気でしたか。何度も読み返したくなるようなお話を頑張って作るので、是非遊びに来てくださいね。一緒に楽しみましょう！萌えてくださーい。 (2019年2月25日 9時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさん、お久しぶりです。またこの子達に会えて嬉しいです。私はこれからも、いやもしかしたらこれまで以上にここに糖分補給に立ち寄るであろうと思われます(笑)。また一緒に楽しませてください。 (2019年2月24日 20時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2019年2月19日 20時
