4話 ページ15
おーちゃんはちょっと考えてからぼそりと言った。
｢荷物は少ない方だから｣
｢･･････え？｣
｢かき集めてもリュック一個かな｣
｢･･････何の荷物？ ･･･････旅行？｣
そう言えば卒業旅行に行こうって誘われてたなって思い出した。
でも、おーちゃんは全然違うことを言った。
｢夜逃げ｣
｢よにげ･･････夜逃げ!?｣
真夜中の住宅街を歩いていたのに思わず大きな声を出してしまって、思いがけず響いた声の騒々しさに、慌てて自分の口を押さえた。
近くの家の２階のカーテンがひらりと揺れるのを見て焦ってたら、おーちゃんの手が素早く伸びてきて、私を引き寄せると音もなく壁際に隠れさせた。
ほどなくしてアスファルトを照らしていた部屋の明かりが消えると、おーちゃんは無言で私の背中に手を回したまま歩き始めた。
不審者通報されなくて良かった！って心から安堵して同意を求めるようにおーちゃんを見上げたら、平静な顔つきでいて、なんだかそれが凄く頼もしかった。
改めて、男の人なんだなって、感心した。
アパートに近づいてきた頃、おーちゃんはまた言った。
｢夜逃げ、いつでもしてやっから｣
おーちゃん？
｢だから好きなようにやって？ 翔君とリスクヘッジだっけ？いろいろ考えて計画してんでしょ？ ･･････俺はやれるって思ってるけどね｣
私は息をのんでおーちゃんの横顔を見上げた。
もしものことがあったら一緒に逃げてくれるって、そう言ってるの？
嘘･･････。
私はありがたくその言葉を受け取った。
翔君と、お店の経営がうまくいかなくなった時のことは話し合ってる。どれだけコストが出たら危険か、売上がいくらになったらピンチか、どこまでなら大きな借金を背負わずに店をたためるか。
･･･････実際に経営が出来なくなっても、おーちゃんはきっと夜逃げなんてしないと思う。逃げるという選択肢はおーちゃんの中にはないって断言できる。
でも、そうやって私の肩の力を抜けさせようとしてくれているのが分かるから、もう、感謝しかない。
｢ありがと｣
御礼を言ったら、やさしくフフって笑っていた。
いつもの、私の大好きな、くすぐったい柔らかな笑顔で。
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ao(プロフ) - kikiさん» kiki様こんにちは。主人公ちゃんいい子なんで、たまに黒くしよう黒くしようとしてるんですが、なかなか染まってくれません。恋人が素敵だからでしょうか。私も青色さんに綺麗な色にしてもらいたいです！ (2019年2月26日 16時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - もちろん、こちらも拝読致しております！主人公ちゃんの清く芯のある人柄が凄く素敵ですねー！こちらも見習う事が多々ありまーす。感謝の気持ちって、ホント大事ですよね。 (2019年2月25日 18時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - わー、cocoro様コメント嬉しいです。お元気でしたか。何度も読み返したくなるようなお話を頑張って作るので、是非遊びに来てくださいね。一緒に楽しみましょう！萌えてくださーい。 (2019年2月25日 9時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさん、お久しぶりです。またこの子達に会えて嬉しいです。私はこれからも、いやもしかしたらこれまで以上にここに糖分補給に立ち寄るであろうと思われます(笑)。また一緒に楽しませてください。 (2019年2月24日 20時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2019年2月19日 20時
