29話 ページ4
家の前でニノが言った。
｢Aちゃんさ、大野さんが行ったとき、泣かなかったでしょ？あれ、なんで？｣
どうして今そんなことを持ち出すんだろうって思いながら、涙はなんとか止まったけど鼻水は出続けるから、ひと啜りしてから言った。
｢泣いてなかったかな。あんまり覚えてないや。っていうか、ニノはどうして泣いてないって知ってるの？ ･･････泣かなかったのは、多分、先輩が行って死ぬほど悲しかったけど、ずっと、そうなるかもしれないことを予感していたからだと思う。それに･････｣
｢それに？｣
｢私にはニノがいたから｣
ニノが驚いた顔をした。
大野先輩を最後に見たあの夜、私は出番が終わると、舞台を下りたその足で、先輩の姿を探して必死に公園を駆け回った。ニノは私が足を止めるまで一緒に走って探してくれた。動くの嫌いなくせに。
どこにも姿を見つけることが出来ず、呆然としながら息を切らして着物で芝生に座り込む私の背を、ニノは一生懸命に撫でてくれていた。
ニノは私よりも汗を流し、荒い呼吸を繰り返しながら言った。
｢家に帰ってろ。俺が街の方も探して来るから。駅に行ったかもしれない｣
もう秋なのに、ニノの服は汗で濡れていた。
走り出そうとしたニノの服を掴んで、私は首を横に振った。もういいよって。
｢ニノ、何か知ってたの？知ってたから今夜先輩を呼んだの？｣
｢･･････呼んだのは、たまたま。あの人と話す機会があって、一回もそっちが弾くとこ見たことないって言うから｣
ニノはしゃがんで目線を合わせると、痛々しそうに私を見ながら呟いた。
｢ごめんな。俺のせいだ｣
酷く悲しい声でそう言われ、私は冷静さを取り戻すことが出来た。
ニノのせいなんかじゃないのに。何を謝らせているんだろう。私はばかだ。
きっと、誰も悪くない。悪いとしたら、先輩に気持ちを押し付けた私なんだ･･････。
あの時、ニノがいたから泣かずに済んだ。私の代わりに心を痛めてくれるニノがいたから。
いつも軽口ばかりで、ひねくれてて、一ミリも素直じゃないのに、あの時のニノは私よりもまっすぐだった。
ニノにその時のお礼が出来るとしたら、きっと今なのだろう。
それは、わかってる。
わかってるけど。
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ao(プロフ) - kikiさん» kiki様、キュンとして貰えて良かったです〜。今日の更新もしてもらえるといいな。次回最終回です。お楽しみに！いつもありがとうございます！コメント貰えてとっても幸せです！ (2019年2月20日 8時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - ありがとうございます。ニノがやっとホントの笑顔になれましたね！最高に可愛い言葉選びにキュンとします！ (2019年2月19日 22時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - kikiさん» kiki様、おはようございます！さてさて、今日の更新もにやける一日のスタートにしてもらえるといいんですけど。私は更新前からにやけています。今から更新作業します。待ってて下さいねー。 (2019年2月19日 8時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - さとあすさん» さとあす様、待って下さってありがとうございました。お話を載せる準備は出来ていたのですが、気持ちが追いつかず。でも次第に妄想は今までの以上に溢れ出して。妄想が自分を引き上げると感じました。ありがとうございます。青さんのいいのあるんで、待ってて下さいね！ (2019年2月19日 8時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - おはようございます！朝から切なく、もどかしさからのにやける１日のスタートになりました！ (2019年2月18日 9時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2019年2月12日 13時
