13 呼び方 ページ13
｢Aちゃん、酒よく飲むの？｣
｢寝酒にグラス一杯くらい。弱くはないよ。智君は？｣
一瞬の間の後、目が合って、二人で同時に小さく吹き出した。
智君。
Aちゃん。
｢もう智君って呼ぶ年齢じゃないね。立派な仕事にも就いてるし、この呼び方、もうやめた方がいい？｣
｢かまわねぇけど、なんかくすぐったい｣
｢ふふ、だよね。私もかまわないんだけど、なんかくすぐったい。･･････あの頃の自分はあんまり胸張れないからかな｣
｢･････なんで？｣
｢なんでって･･････｣
･･････智君、わからない？
･･････そりゃわからない、か。私、最後は智君に嘘ばっかりついてたから。そういう自分が嫌で仕方なかった。でもわからないなら、それでいい。それが、いい。あの時の嘘は有効だってことだ。欠片も言いたいと思っていなかった、私のあのさよならの言葉は成功しているってこと。
私は明るく言った。
｢じゃあ、なんて呼ばせて貰おうかな〜｣
｢大野先生以外にして。疲れる。やだ｣
うんざりと言って溜息をついてる。よっぽど仕事大変なんだね。
･･････聞きたいな。どうして医者の道を選んだのか。
昔は勉強嫌いだったのに。でも本気をだせば何でも出来る人だった。憧れた。遠くに感じることもあった。･･････でもそのたび、うちら同じ人間だよって智君が下りてきてくれて、束の間だったけど一緒に歩けた。
その後、いくつか呼び方を変えて言ってみたけど、どれも響かなかったみたいで、智君の唇がだんだん尖っていく。
｢もう、呼び捨てでいいよ｣
｢･･････いいの？｣
もう面倒くさいって顔で頷かれて、躊躇ってからその名を呼んだ。
｢･･････智？｣
緊張した。
呼び捨ては、高校時代、智君の幼なじみの女の子が呼んでいた呼び方だった。ずっと羨ましかった。彼女の私より近い位置にいるんだと言われている様で、その呼び方をされるたびに聞いていて怖くて。
智は俯きがちに笑った。
｢ふふ。照れる。 ･････Aって呼んでいい？｣
･･････いいのかな。ダメな気がするけど、呼ばれてみたい。
欲求に抗えなかった。
頷いたら、あんがとってお礼を言ってくれた。
でもすぐには呼んでくれなくて、ちょっとがっかりした。
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ao(プロフ) - あゆねさん» あゆね様ありがとうございます！私も羨ましいです。こんな元彼がいたらいい思い出作れそうです。頑張ります。感謝です。当分 (2018年11月15日 14時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
あゆね - このお話がとても好きで、毎日読んでいます！主人公ちゃんがほんとに羨ましいですね(笑)これからもaoさんのペースでがんばってください！応援してます！ (2018年11月12日 0時) (レス) id: 1048fe7101 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様、読んでいただけて感謝です。二人に挟まれて羨ましい限りです。今後もご期待下さいませ！ (2018年11月11日 7時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
ユミ(プロフ) - 今日も続きが読めて嬉しいです！翔くん出てきたー！と思ったらかなりグイグイでキャー！です。智ってば寝てる場合じゃないのにー！とニタニタしておりますよ（笑） (2018年11月10日 20時) (レス) id: 5a2a163833 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様コメントありがとうございます〜！新作も萌えを追求していますので、是非ご一緒にときめいて下さい。気に入ってくださるといいのですが。ありがとうございます！ (2018年11月8日 20時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2018年11月1日 14時
