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ここに姉がいて、 ページ17

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姉は一年の間、一度も帰ってこなかった。


夏も、冬も、年末年始も、もしかしたら帰ってくるかもしれないって期待してた。次に帰ってきたら謝ろうって、そう決めてた。


親は定期的に姉と電話をして連絡をとっているみたいで、俺はいつもそれをこっそり盗み聞きして、姉が元気にしているかを確認していた。母にはバレていた。

夏も冬も、年末年始も、全部"帰れそうにない"って申し訳なさそうに伝えられたらしい。母が少し間を空けて「…そう」と呟いた時は、姉は帰ってこないのだ。



次の年の夏も帰ってこなかった。

もしかしたら、姉はもうここへは帰ってこないかもしれないと思った。俺は二度と姉には謝れなくて、ずっと姉と会えなくて、話せないままで。

俺は手首のミサンガを触って、一生懸命記憶の中のやさしい姉を辿った。




高校三年生の冬。すっかり日は暮れて、街灯と月明かりを頼りに家まで帰る。ポケットの中のカイロを握って、マフラーに顔を埋めた。早く温かいご飯が食べたい。

漸く着いた家のドアを開けて、疲れきった声で「ただいま」と言う。靴を脱ごうと視線を下にして、気づいた。…靴が一足多い。こんな時間に客か?と不思議に思ったが、ふと思い出す。この靴は、姉が履いていた靴だ。


胸が煩く鳴る。姉が、帰ってきた。途端に"どうしよう"で頭がいっぱいになる。リビングのドアの前で立ち止まっていると、久しぶりに聞く姉の声がした。懐かしくて、胸が苦しかった。


ドアノブに手をかけて、ゆっくりドアを開ける。温かい空気と、夕飯の匂いが冷えきった体に染みた。

視界の先では両親と姉が談笑していて、姉は丁度立ち上がって飲み物を取りに行こうとしていた。姉と目が合うのも久しぶりだった。姉は「おかえり」と、眉を下げて笑って言った。

俺はリュックをその場に放って姉の方に駆け寄り、抱きしめた。









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午睡(プロフ) - RIOさん» 完結までお付き合いいただき、ありがとうございました!(;_;)是非、姉弟をよろしくお願いしますッ…!本当にありがとうございました!! (2021年10月27日 18時) (レス) id: 95250c6930 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 最後まで読ませてもらいました!小野寺姉弟、推しちゃいそう!笑シスコンとブラコンかぁ~小野寺くんに愛されたい((  長い間、お疲れ様でした! (2021年10月27日 7時) (レス) @page50 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - RIOさん» ありがとうございます…!!在り来りですが、オチといえばこれかなと…(笑)安定に推しが尊いですッ!! (2021年10月12日 1時) (レス) id: 95250c6930 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 新しいの読ませてもらいました!オチ完璧ですね(笑)そして相変わらず推しが尊い╰(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)╯ (2021年10月3日 23時) (レス) @page32 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - RIOさん» 寺くんいいですよね…(ニッコリ)ありがとうございます…!! (2021年9月26日 2時) (レス) @page28 id: 95250c6930 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:午睡 | 作成日時:2021年8月17日 2時

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