賞味期限。2

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「で？お前はなんでああいうことしちゃうんやろうね。このお人好し」

『うっ......いや、あの』


一緒に帰ろうと龍友さんに誘われ、今日は終わるのが遅いから断った。

のにも関わらず、そんなん知りませーん...とか言いながらソファに座って待ってくれている。
私は龍友さんの圧を感じながら資料と睨めっこだ。


龍友さんが言う"ああいうこと"というのは、勝手に私が篠田さんと龍友さんの約束を作ってしまったことだろう。



「僕のこと好きやないの？」


少しだけ眉を下げて言った龍友さんの、その言葉は重かった。

龍友さんからそんな風に聞いてくることなんて今までなかったし。
尚更、重い。



『...っ好きです、』

「っじゃあ、」
『でも、！』


『でも...龍友さんが幸せなら、私は充分です...』
『元々、篠田さんのこと忘れられたらっていう条件付きでしたし...っそれに、』

あわよくば、私が幸せにできたらって話であって、


少しの本音と少しの偽りを混じえて、私は言葉を選んだ。

明らかに有利なのは篠田さんだってわかりきってるから。


こんなに素敵な人なんだもん、龍友さんは。
篠田さんだって、いつかは好きになっちゃうよ。


「あほやね。」

『っ...』


「ほんまに、あほ」
「もっと、自分の気持ちに素直になればええやん。」


しんと静まり返る2人きりの楽屋に龍友さんの低くて、少し掠れた声が響いた。


苦しくて、寂しくて、物足りない。
こんな関係に収まりたくない。

好き、大好き。


でもそれを口にしたところで、どうにかなるような簡単な恋じゃないから。









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