愛故に。

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今日から始まる大きな撮影。

勿論ヘアメイクの私も現場に立ち寄る訳で。


...と言っても初めてだから緊張で手元が震えてる。




隼「A緊張してんのー？」

『だ、だって初めてだから...』

隼「大丈夫なのにねぇ。」



安心して、と隼くんの元気な笑顔で言ってくれる。


本当に癒される笑顔...。

弟みたいで可愛い。



隼「あーでも、そっちは大丈夫じゃないか...」

『え、なにが？』

隼「この撮影、女の人との絡みが多いの。」




意味わかる？と尋ねられるけどなんのことか全くわからない。


隼くんが指さした方向を見てみると、そこには目立つ赤髪の中務さん。

と、女の人。



『あ、工藤花奈さん...』

隼「裕太くんずるいよねー、あんな可愛い女優さんの相手なんだから。」



CMや、映画にドラマに雑誌。

至るところで注目を集めてる女優さん。


可愛くて、ふわふわしてる小動物みたいな人。

女の私でさえ惚れ惚れしちゃうもん...。




隼「...あ、まだ気づいてない感じか。」

『隼くんさっきから難しいことしか言ってない...。』

隼「裕太くんも大変だなぁ。」



そう言って隼くんも相手の方への挨拶へ行った。


私の視界の先で、中務さんと工藤さんが楽しそうに話している。

...私には笑ってくれたことないのに。



胸が握り潰されてると錯覚するくらいに苦しくて、寂しくて。

すぐに目を逸らした。


それでも、胸の痛みは止まない。






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