アイツの空 (ページ39)

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「ううん。
喜んでるよ。
ショータの作った曲だって分かって。
ますます感動してるし」

それは本当なの。

だけど、ショータが離れていきそうで怖いだけ。

彼女でもないのに。

変なの。

「もうちょっと話したい。
ええ？
編集部、寄ろう」

不意にショータが私の手を握って、
薄暗いビルの中に入ってく。

もう守衛さんもいなくて、
裏口の鍵を開けて入った。

「なんか、悪いことしてるみたいだね」

「うん、
ドキドキするな」

秘密が増えるたびに、
忘れられなくなる。

真っ暗な編集部。

誰もいないはずなのに、
そこに人影が動いて。

目を凝らしたら、
それが結衣ちゃんだって分かった。

デスクに座ってて、
ハイヒールの足がゆらゆら揺れてる。

しがみついて、キスしてる相手・・・

レストランで見た、社長の息子の修二くんだ。

ショータの顔が青ざめてく。

知らなかったんだ。

「行こう」

結衣ちゃんに気付かれる前に、
ショータの手を取って、駆け出してた。

失恋した時は、

カラオケなんだよね。

ショータに目で合図して、
カラオケ屋に来たものの。

ショータ、
歌う気分にはなれないみたいで、
果てしなく落ち込んでる。