アイツの空 (ページ19)

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ガシって腕を掴まれた。

ええっ・・・

胸がきゅうきゅうし過ぎて、
振り返れない。

すぐに腕は離されちゃって。

「A先輩、これ」

ショータが、
チケットを差し出してくる。

さっきの曲を歌ってるバンド、
クロスザスカイのコンサートチケットだ。

なんで持ってんの？

「A先輩、好きって言うから。
あげる」

可愛い笑顔。

また敬語じゃない。

ショータは無意識なのかな。

すごく自然で。

私だけがドキドキしてる。

「いいの？
結衣ちゃんは？」

「結衣はあんまり好みやないねんて。
どうせなら好きな人に楽しんでもらいたいやん」

なんか自分のバンドみたいな言い方してる。

可愛いの。

「ショータの分は？
ちゃんとあるの？」

私一人がもらっちゃったら、悪いし。

「うん。
ちゃんとあるで。
一緒に行かへん？
あ、でも・・・
そんなんしたら、
しんちゃん怒るかな」

ショータが迷い出しちゃった。

一緒に行きたい。

一回だけでいい。

「あれね、びっくりしたよね。
酔った冗談じゃないかな。
別に今更、私が誰とどこ行こうと、
何にも言わないでしょ」

取材でしょっちゅう、
ショータや他の男性記者と二人で出かけてても、
何一つ気にしてる様子ないし。