君にロックオン！【青根高伸】 (ページ35)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:91,527 hit

34.喧嘩ページ35

.

家にやってきた青根くんに、私は即抱きついた。

｢シャワー浴びてないから汚いぞ｣

そう言って青根くんは私を引き離す。

｢大丈夫だよ…一緒に入ろ…｣

｢随分酒飲んでるな。何かあったのか｣

青根くんがうちに来る前に缶ビールを2本開けていた。
最近、なんだかうまくいかないことばかりだ。
青根くんは変わらず優しいし、男らしくて
別に文句があるわけじゃない…。
文句なんてないけど、やっぱり男世界で生きてきたからか
女の子の喜ぶこととかわからないし。
付き合ってもうすぐ3年だけど、旅行に行ったり
カップル定番のスポットに遊びに行ったりというのはあまりしなかった。
誕生日プレゼントも便利な家電とか、地味なものばっかりだったな。
じわじわと不満が沸いてくる。

｢青根くんはディズニーランドとか行きたくないの｣

まぁどう考えても絶対興味ないだろうし、そもそもディズニーにいる青根くんは絵的に怖いけど。

｢行きたいのか。じゃあ、行くか？｣

｢そうじゃなくてさ……｣

言い表せない不満。それは仕事でも、私生活でも、青根くんに対しても…。
わかっている。きちんとした会社でマトモに働けている。
誠実で優しい男性と、普通に仲良く付き合えている。
それ以上求めるものなんてないはずなのに。
贅沢だっていうのはわかってる。

｢歩ちゃんはいいなぁ…早くに結婚して。子どもも出来て幸せそうで｣

ついつい、他人が羨ましく見えてしまうんだ。

｢Aさんは何か不満なのか｣

｢不満だらけだよ。仕事でも私ばっかり怒られるし。皆結婚して辞めちゃうし！｣

弱っているから、いつものように優しく慰めて欲しいだけだったのに。

｢仕事とか、社会に出たらそういうものだろ。俺だってまだ怒られてばかりだ。
Aさんがそんな甘えた事言うなんて、珍しいな｣

青根くんは高校生のときは、仕事の愚痴も優しく慰めてくれたのに。
自分も社会人になって、仕事するようになってからは
仕事の話に対しては少し厳しくなった気がする。
説教なんていらないんだよ…ただ癒して欲しいだけなのに…。

「周りと同じように結婚すればそれで幸せなのか。仕事が嫌だから結婚すれば幸せになれるって考えは、違うと思うぞ」

私はその言葉に、涙がこぼれた。

「もういい…帰ってよ…」