05-私のこと、好きかもって ページ6
.
よくある事だし、大した事は無いけど、それでも熱い。
びっくりして仰反った時、頭が誰かの胸にぽすん、と当たった。
「フロイド先輩…!?」
余裕の無い顔したフロイド先輩が不機嫌そうに私を見下ろしていた。
そのまま私は彼に手を引かれ、ぐるりと体を回されて先輩と対面する。
突如、ひやりとした感覚が頬の熱さを麻痺させる。
フロイド先輩はこの一瞬のうちに保冷剤を持ってきてくれたのだ。
「先輩…へい、きです……」
「跡になったらどーすんの」
「別に……跡ぐらい、」
「ぐらいじゃねーよ。女の子なんだからさあ」
「っ、」
久しぶりに合った、目。
これ、やばい。
その瞳の中に映っているのは確かに私だ。
そして、それは心配の色で揺れている。
頬はきんきんに冷やされているのに、どんどん顔が火照りを感じる。
「っ……何、その顔」
「……っや、あの…」
「…………オレの事好きじゃねえくせに」
「え?」
こんなに至近距離でも、フロイド先輩の言葉が良く聞き取れなかった、そのぐらい小さい声。
見上げても、「何でもねー」とそっぽを向かれた。
フロイド先輩の耳が赤い。
その意味が何を示しているのか、私にはわからない。
「Aさ、今日廊下で歌ってたでしょ」
「っえ? …は、い」
「あれ、やめて」
ぴしゃん、と、落雷にあった感覚だった。
熱かった頬が、急激に熱を落とす。
やめて、って。どういう意味?
…………フロイド先輩にとって、私の歌は…聞きたくも無いほど、嫌って、こと?
「A? …なぁ、聞いてんの?」
「……っすいません、でした、」
反射だった。フロイド先輩の手を払ったのは。
ぱしん、虚しい音が空間を伝ってキッチン内を走る。
手を振り払った先の先輩の顔は驚愕に満ちている。
そして私は、フロイド先輩が何かを言う前に、思わず立ち上がって休憩室へと走り出す。
「っ、!
……すみませ、」
「いえ、僕こそ失礼しました……
_Aさん?」
「あ、ずーる、先輩…」
突然VIPルームから出てきたアズール先輩とぶつかる。
見上げた先輩の顔も、フロイド先輩と同じ表情をしていた。
「アズール、」後ろでフロイド先輩が彼を呼ぶ声が聞こえる。
私は一礼だけして、再び走り出し休憩室へ逃げた。
「…………はぁ、は、」
何を、期待していたんだろう。私。
助けてくれただけのフロイド先輩に、私は、何を。
.
879人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おそらまめ(プロフ) - 森Shizuku?さん» コメントありがとうございます!高校生の時のあの青春って本当に素敵ですよね。その通りです、10話のタイトルはエースの言葉を代弁しました!何度もご覧いただき光栄です…。本当にありがとうございます! (2021年10月6日 11時) (レス) @page11 id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
森Shizuku?(プロフ) - このお話、何度読んでも素敵です。10話のところってエースの言葉なんですかね。深いし、みんなそれなりに高校生してるなと思いました! (2021年10月1日 20時) (レス) id: 7c267cd787 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 智真さん» 智真様、完結のお祝いありがとうございます!そうなんです、男子高校生をやってるフロイドくんが書きたかったんです…!そう言って頂けて感激です!監督生と2人の間に何があったかは、ご想像にお任せします(笑) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 華のフロランタンさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(^^)また何かご縁がございましたらどこかでお会いしましょう! (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - モブサイコ100さん» 最後までご愛読ありがとうございます!オクタは本当に素敵な3人なので絶大な人気ですよね…!ここは沢山素敵な作品がございますが、読者様にとってこの作品が心に残る作品であれば幸いです(^^) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年8月3日 1時