アンデルセンの両片想い【フロイド】

25‐人違い ページ26

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フロイド





何でか知らねーけどAに手はらわれた。

ドリンク頼まれてたって、何。
伝票なんか持ってなかったじゃん。


明らかオレの事避けたくね？





「………んだよ今の顔」





全然可愛くねえ。
いつものAの笑顔じゃなかった。
宝石みたいでキラキラしてる、笑顔。


茫然と遠くなるAの背中を目で追った。
＿不意に、くん、と引っ張られる袖。





「フロイド先輩」

「小エビちゃん」

「Aちゃん、凄く楽しそうに働いてる…。
まるで陸に上がってきた人魚姫みたい」





小エビちゃんの顔が、何かイラつく顔してた。
いつもの間抜けな顔じゃなくて、何つーか、メスの顔。

メスの顔してる時の小エビちゃんは面倒臭え。
ベタベタ触ってくる。オレの嫌な事、すげえする。





「………注文、何にすんの？」

「あ、え、ええっと…じゃあ、オレキノコのリゾットで！」

「ぼ、僕はムニエルを」

「ツナパスタ！」

「………ボンゴレのパスタを」





オーダー表に書いてそのままメニューを片手に席から離れる。
そしたら、また弱い力がオレの背中に集中した。

振り向いたら、やっぱり小エビちゃん。





「……………何、小エビちゃん？」

「先輩、折角こっちに来てくれたのに。
もっと話しませんか！ ほら、バイトして疲れたでしょう？」

「ごめん、急いでんの。また今度構ったげるから」

「先輩は本当気まぐれですよね。わかった、今日は気分乗ってない日でしょ？
いつもはもっとぐいぐい来ますもんね」





全然分かってねぇし。
何がどうなったらこんなに勘違いできんの？

そりゃ前まではAの顔上手く見れなくて小エビちゃん越しにAを見てたけど。


…………まさか自分がオレに好かれてるって自信あるワケ？
ウケんだけど。あは。





「…………………あのさぁ、小エビちゃん？」

「何ですか？」

「オレぇ、他人にベタベタつきまとわれんのって……すげぇ嫌いなんだよねぇ」

「っえ、」





勝手に触れていい女の子はAだけなんだよ。
あーイライラする。伝票を投げるようにジェイドに渡した。


テンション下がる。気分転換に料理運ぼ。





「先輩、」

「…ッチ」





さっきと同じ位弱い力がオレの裾を引っ張った。
2回目は優しく言ってやんねぇ。まじでうぜえ。





「だからさぁ………オレべたべた触られんの嫌いって言ってんじゃん＿＿」





振り返って、絶望した。
Aのすげえ傷ついた顔。





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