Butterfly -tkin- 《1》 (ページ49)

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慧side

真っ暗だった海の上の夜空に、
カラフルな光の花が開いては落ちていく。

あとに残るのはその輝きの残像と、
火薬の匂いに混ざった潮風だった。

雄｢…キレーだね、伊野尾くん｣

横に立った高木の横顔が、
花火の光にキラキラと照らされる。

慧｢うん、｣

咄嗟に出た言葉はそんな
ありきたりな二文字だけ。

吸い込まれそうなくらい広がる夜空が
怖くないのは、隣に高木が居るからだ。

不意にまだ机に置かれたまんまの
プリントを思い出して、
" 留学 " の字が頭をよぎる。

もし俺がそれを高木に話したら…

雄｢俺、海大好きなんだ。

だから、今超しあわせ笑｣

高木はどんな顔をするの？

今みたいに、優しい目をして
笑ってくれる？

それとも、悲しい目をして
…止めてくれる？

その感情を自分の中で認めたら、
もうそれを消さなきゃいけないわけで

俺がここから離れたら
消せるのかなんて

慧｢たかぎ、｣

本当の消し方も分からないくせに。

自然と触れた手が、心に急かされて
気づいたらその指に自分の指を重ねていた。

雄｢えっ──？｣

高木が驚く声がして

───バーン！

今日一番の大きな花火が、
真っ暗な海空に咲いた。

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