第88話 ページ46
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――彼女は風が吹いた瞬間、目の前で消えた。
文字通り、"消えた"のだ。
「A……?」
「な、ぜ…」
煉獄さんの腕に抱かれていたはずの彼女。
だが、煉獄さんは何も抱いていない。持っていたのは、Aがいつも着ていた羽織と、折れた刀だけだった。
「A…A!!」
声を荒らげ彼女の名前を叫ぶ煉獄さん。失神してもおかしくないくらい出血しているのに、煉獄さんはひたすら名を呼んだ。
声が枯れ、ふらりと倒れるまで、呼んでいた。
「煉獄さん!!」
自分も決して軽傷ではない。勿論、伊之助も。
…動け、身体…煉獄さんを早く助けなければ。
「(全身が痛い…心臓が痛い……涙が、止まらない…!)」
「おい…A…!出てこいよ…!なんで消えんだよ!!」
「伊之助…」
「お前はいつもそうだよな!!勝手にどっか行きやがって…!!知らねえとこで戦ってボロボロにされてよォ!!ふらっと戻ってきたと思えば、他人を庇ってまた怪我しやがって!!舐めてんのかよ俺達のこと!!」
ボロボロと被り物から涙が溢れるくらい、泣きながら叫ぶ伊之助。
「出てこいよ!!」
ぜぇ…はぁ…と肩で息をする伊之助は、その場でバタリと倒れた。
「伊之助!…っ!」
駆け寄ろうとするも、俺も片膝をついた。
すると、禰豆子の箱を持った善逸が重い足取りでこちらへやって来た。
「炭治郎…伊之助…!煉獄さんも…無事だったんだな…」
「善逸…」
「で、なんでお前らそんなに泣いてんの?つーかAちゃんは?」
キョロキョロと辺りを見渡す善逸が気づく。
「…なぁ…Aちゃん…どこだ…?」
「……」
「なぁ…炭治郎…!伊之助!Aちゃん何処に居んだよ!!」
状況を知らない善逸は、怒りを声に乗せて俺達に問いかける。
「…消えた……」
「は…?」
「消えたんだ…俺達にもわからない……!」
列車が横転し、上弦の参の鬼との戦いから、さっきまでの流れ説明をすれば、溢れ出る涙。
…本当に消えたんだ。風に攫われるように。
「どういうことだよ…」
「わからない…煉獄さんが抱いていたはずなのに…風が吹いた途端消えた…」
「なんだそれ…ふざけんなよ…!!なんでAちゃんが消えるんだよ!」
「うるせえよ紋逸!!消えたもんは消えたんだ!!!!」
「なんだよ何でお前そんなに泣いてんだよ!」
「うっせえ!」
「意味わかんねえよ…そんなボロボロで…なんで…」
俺達は泣いたまま、暫くそこを動けなかった。
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たくあん(プロフ) - ロアさん» コメントありがとうございます!!柱なので頑張ってもらっちゃいました!!!((笑 ありがとうございます( ; ; )頑張ります( ; ; ) (2019年12月27日 0時) (レス) id: 0c6fafeba7 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 夢主ちゃん、下弦とのエンカウント率高www((更新頑張ってください!! (2019年12月22日 16時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ふらんさん» コメントありがとうございます!!ご期待に添える展開に持っていけるか不安ですが、更新頑張っていきます!!ありがとうございます( ; ; ) (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - ピースサインさん» コメントありがとうございます!!面白いって言って頂けて本当に嬉しいです( ; ; )更新頑張ります! (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - 葵咲さん» コメントありがとうございます!( ; ; )うおお…う、嬉しい…!( ; ; )更新頑張ります!( ; ; ) (2019年7月13日 18時) (レス) id: c661d68094 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たくあん | 作成日時:2019年6月25日 1時