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『あ…はは、そうですよね…!
私ちょっとトイレ行ってきます。
あ、あと志麻くん。敬語!!」
溢れ出てきそうな涙を堪えるかのように、明るく対応したけど、みんなの目が怖かった。
怒られるのに、廊下を走ってトイレに駆け込んだ。
腕で必死に口を擦って、髪の毛も解いて、個室でしゃがみこむと、堪えていた涙がポロポロと溢れ出して、止まらなくなる。
声を我慢しているからか、口から漏れる声が嫌というほど、誰もいない暗いトイレに響き渡った。
こんなことなら、リップなんて塗らなければよかった。
あんなに言われるなら、髪の毛も高めに結ばなければよかった。
誰かのために可愛くなんてならなければよかった。
『うっ…くぁ…』
部活に行かなければいけないのに、涙は止まらない。どんなに拭っても収まらなかった。
治まった頃には、いかにもさっきまで泣いていました。とでも言うかのような、赤くなった目に浮腫んだ顔。
水で洗っても元には戻らなくて、部活には行かなきゃいけないから、そのままの顔で行くことにした。
『遅くなりました』
顔を見られないよう、下を向いて足元だけの視界で前へと進むと、予想通り人とぶつかって、ふわっと香った優しい香水の香りで誰だかすぐに分かった。
セ「ちょっとついてきて。」
グイッと引かれた腕を振り払うことが出来なくて、ただ先生に逆らうことなく付いていく。
ポケットから出した何個もある鍵の中から迷いなく取り出した1つの鍵を相談室の扉の鍵穴に差し込んだ。
教室に入った瞬間、ほこりの独特な香りと教室の木材の香りが漂う。
座り、と優しく包み込むように言われた言葉。
ギギギ、と耳が痛くなるような音を立てながら、椅子に座ると、冬ならではの椅子の冷たさが直で伝わってきた。
思わず身震いをすると、寒い?なんて少し笑いながらいう先生に、小さく大丈夫です。と答える。
私の目の前に椅子を持ってきて、座る先生は、彼ならではの優しい落ち着く声で話し始めた
セ「…突然やけど、さっきのごめんな。
多分みんなも悪気はないんやと思う」
『あはは、どうですかね』
戯けて笑ってみたけど、やっぱり顔は引きつってしまって、ドッと押し寄せてくるこの空気を和らげることはできなかった。
セ「これはセンラの意見やけど…」
_____可愛かったで。
その言葉を軽く流すことは、私には出来ないようだ。
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タシア松(プロフ) - ぽにょさん» ありがとうございます!!最高の褒め言葉です、 (2022年9月25日 20時) (レス) id: d89a5c0024 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにょ - 1話1話見るごとにきゅんきゅんしてもう最高です_:(´ཀ`」 ∠): (2022年8月8日 18時) (レス) @page14 id: b0029b04cd (このIDを非表示/違反報告)
タシア松(プロフ) - 紫苑さん» コメントありがとうございます!すごい嬉しいです!!!ありがとうございます!!この作品を好きだと感じてもらえることができてよかったです! (2021年10月26日 6時) (レス) id: 63758ca099 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - な、な、な、なんだこの……神作者と神作品は!? (2021年10月26日 2時) (携帯から) (レス) id: d13b409c87 (このIDを非表示/違反報告)
タシア松(プロフ) - 乘肄さん» 最高のお言葉ありがとうございます!! 完璧にかけたのなら幸いです、これからも日々成長していけるよう頑張りますので、よろしくお願いします (2020年5月19日 22時) (レス) id: 73485a3048 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タシア松 | 作成日時:2020年1月12日 23時