ぶん殴って ページ10
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扉をくぐって医局に出れば、そこに東城大のみんなの姿はなかった。
代わりに友人が1人と、ふんぞり返っている顔も合わせたくないヤツが1人増えている。
高「ひとまずミーティングから始めます」
顔を顰めた私にチラリと視線を寄こして、権の字は資料を配ろうとする。
しかし、その手を制した人物が一人。
西「先に一つ話がある。坂口」
坂「は、はいっ」
西「このデスクはどういうことだ?随分と東城大の物が残っているが」
私のデスク一帯に広がっているのはローテーブルや床に置ききれなかった荷物。
坂口先生は顔を青くしていて、思わず小さく舌打ちしてしまった。
隣で征司郎がふっと鼻で笑ったのがムカつく。
西「私は全体を広々と使えと知ったはずだが」
坂「実は、その………」
坂口先生はしどろもどろになりながら仮眠室から出てきたばかりですみっこにいた私をゆっくりと見る。
それに倣ってアイツと帝華大の医局員、それから権の字の視線が私に集まった。
西「おや。これはこれは…"櫻庭"先生ではありませんか。こんな所で如何なさいましたかな?」
わざとらしい丁寧な言葉遣い。
強調された私の名字。
ホントこいつ腹立つな。
今すぐにでもぶん殴ってやりたい。
そして、そのムカつくヤツの隣に資料片手で立っている権の字は目を丸くしている。
ごめんね。
今まで私が"櫻庭"だってこと黙ってて。
後でちゃんと、説明するから。
心の中で権の字に謝っているものの、私の口から出る言葉はアイツ───西崎大先生に向けられたものだ。
「今回私も東城大の医局員としてカエサルのチームに参加させて頂くこととなっておりますので。ミーティングに参加しに来たまでです」
西「ほう。これは驚いた。東城大の医局員として、ですか」
「えぇ。ですから少し医局の使用範囲については規制させて頂きました。何か問題でも?」
西「いえいえ。とんでもない」
「では、この話はもういいですね。早くミーティングを始めましょう。時間は限られていますからね」
西「そうですね。……高階、資料を配れ」
高「……はい」
驚いてフリーズしていた権の字は漸く動き出して資料を配り始める。
征司郎はさっさとそれを受け取ると、私の腕を引いて医局員の塊の後方へと向かっていった。
渡「お前は俺の隣に居ろ」
「言われなくても」
そっと耳元で囁かれた言葉に小さく返して、私はアイツを睨みつけた。
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霜月(プロフ) - 希央さん» お返事遅くなりましてすみません。コメントありがとうございます!本当にスローペースですが、頑張ります! (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 美里さん» お返事遅くなりましてすみません。ありがとうございます。これからも皆様に楽しんで頂けるよう頑張ります! (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 中原三日月さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなりましてすみません。更新、頑張ります! (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 沙月さん» お返事遅くなりましてすみません。そうだったんですね!私も自分の名前に使われている漢字が出てくると驚くのでお気持ちわかります(笑)。これからも更新頑張ります! (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
希央(プロフ) - スローペースでも構いません。ちゃんと読んでいますよ!更新楽しみに待ってます (2019年4月8日 2時) (レス) id: 29de18e512 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年12月17日 23時