空気に溶ける ページ19
．
「ん……？これは……」
画面をスクロールしていると、ふと新たにリストへ追加されている患者が目に止まった。
昨日はこんな名前無かったはず。
「まだ来てないってことは入院予定なのかな」
右手でタブレット端末を持ちながら、左手を白衣のポケットに突っ込む。
カサリと、手のひらサイズの箱が指先に触れた。
それを取り出して、軽く上下に揺すりながら口元へ運ぶ。
一本だけ飛び出したそれを咥えた。
レーズンのようなシナモンのような、セブンスター独特の甘い香りがする。
「んーっと…」
箱を仕舞ったついでにポケットの中を再度ガサガサと漁るが、お目当てのものは見つからない。
渡「ほらよ」
突然目の前に現れたライター。
顔を横に向ければ、隣に征司郎が腰掛けていた。
渡「お前のライターは俺の机の上」
「あらら、仮眠室に忘れて来たか」
受け取って、咥えたもの──煙草の先に火を付ける。
深く息を吸って、ゆっくり吐いた。
紫煙がゆらりと澄んだ空気に溶ける。
渡「何かめぼしいものは？」
「一個だけあったよ。ほら」
タブレット端末を手渡してから、空いた手で煙草を指に挟む。
もくもくと上がる煙を吸うこともせずにぼんやり眺めていたら、隣からも同じように煙が漂ってきた。
征司郎が画面を眺めながら煙草を咥えている。
銘柄は私と同じくセブンスター。
元々吸っていたのは、確か征司郎のお父さんだったはず。
いつの間にか、気づけば私も征司郎も嗜むようになってたなぁ。
私は滅多に吸わないけど征司郎は結構頻度高い。
気をつけて見ておかないと、知らぬ間に何かの病気にかかってそうだ。
医者の不養生とか笑えない。
「煙が二乗された〜」
渡「そりゃ俺はここに吸いに来たからな」
「私は別に吸いに来たわけではないんだけどね」
ただ何となく。
それだけなんだけれど。
もう一度煙草を咥えて息を吸い込んだ。
「んで？どうなの？」
煙を吐き出しながら聞いてみれば、征司郎は黙ったまま。
未だじっと画面に表示されたデータを眺めてる。
ゆっくりと口角が上がった。
渡「これでいく」
「ん。りょーかい」
どうやらお気に召したらしい。
まぁ、他に良い選択肢がないってのもあるんだろうけど。
「じゃあこれで話進めとく。猫ちゃんにも伝えるね」
立ち上がって煙草を踏み潰す。
火が消えて、ジャリッとたった音に混じって細い煙が溶けた。
終わり
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霜月(プロフ) - 希央さん» お返事遅くなりましてすみません。コメントありがとうございます！本当にスローペースですが、頑張ります！ (2019年4月21日 23時) (
レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 美里さん» お返事遅くなりましてすみません。ありがとうございます。これからも皆様に楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 中原三日月さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなりましてすみません。更新、頑張ります！ (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 沙月さん» お返事遅くなりましてすみません。そうだったんですね！私も自分の名前に使われている漢字が出てくると驚くのでお気持ちわかります（笑）。これからも更新頑張ります！ (2019年4月21日 23時) (レス) id: 7faa8b6556 (このIDを非表示/違反報告)
希央(プロフ) - スローペースでも構いません。ちゃんと読んでいますよ！更新楽しみに待ってます (2019年4月8日 2時) (レス) id: 29de18e512 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年12月17日 23時
