寂しくなんかない ページ37
≪Your side≫
ゆさゆさと、身体を優しく揺すられる感覚がする。
ゆっくりと浮上する意識の中で聞き慣れた声がした。
(この…声は…)
「ご…ん、のじ…？」
高「おはようA。起こしてすまない」
「んーん。にじかんたった？」
起きてすぐだからか、若干舌が回らない。
まだ眠い目をぱちぱちと瞬かせていると、視界の端にこれまた見慣れた爽やか青年。
「ありゃ、世良くんじゃん」
世「おはようございます。あの、まだ2時間は経ってないんですけど」
そう言いながら差し出してきたのは私のスマホ。
小さく着信音を流しながら振動中。
高「電話が掛かってきたから起こしたんだ」
「そうだったんだ。ごめんね、ありがとう」
誰だろうと覗いたディスプレイには。
"征司郎"の3文字。
本当に連絡を寄越してきたのか。
いつから鳴っているのかは分からないが、一先ず出よう。
「もしもし」
渡『遅ぇよ。いつまで待たせんだ』
電話越しの征司郎の声はいつもの3割増しぐらい怠そうに聞こえる。
「仮眠中だったのよ」
1つあくびをすると、征司郎がくつくつと笑った。
渡『で？寂しくなった？』
「いや、ぜーんぜん？」
挑発的な声に鼻で笑って返す。
別に寂しくなんかない。
「征司郎こそどうなのよ。私の言った通りそっちはつまんないでしょ」
今度は私が挑発的な言葉で問うと、征司郎は少し間を開けてから一言、『こめ』と言った。
「え？こめ？…こめって、お米のこと？」
渡『米が食えねぇ』
予想外の返答に言葉が出てこなくなる。
押し黙った私に対して、征司郎はまたくつくつと笑った。
してやられた。
思わずため息が出てくる。
そんな私を見て、静かに耳を傾けていた世良くんと権の字が不思議そうな顔をする。
「征司郎ったら、お米が食べられないのが嫌とか言い出した」
スマホを少し顔から離して二人にそう言うと、揃ってデスクの上のダンボールに入った炊飯器を見る。
あのダンボールには、世良くんと美和ちゃんが片付けた征司郎の私物がてんこ盛りだ。
渡『誰かと一緒に居んの？』
私が誰かに向かって話しかけたのが分かったらしく、そう聞いてくる。
「世良くんと権の字」
渡『何で』
二人の名前を出した途端、征司郎の声のトーンが低くなった。
あ、これ、あれだ。
不機嫌な時の声のトーンだ。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
