陽の下で ページ33
私と権の字は宛もなく。
一先ず中庭へと出てみた。
あそこにはベンチもあるし、外だし、混乱した頭を少し落ち着かせるには持ってこいだろう。
居るとは限らないけれど、それでも今後の為にも何か彼女に声を掛けるべきだと思った。
室内の蛍光灯とは違う日の光が目に刺さって眩しい。
走り回る子ども達や、散歩をしている患者さん達の中でベンチに座っている木下さんが見えた。
二人で顔を見合わせてからベンチへと近づいて行く。
高「看護師だったんですね」
一歩前に出た権の字がそう彼女に問う。
俯いたまま握り締めている彼女の拳は白くなっていた。
何かに耐える様な表情。
きっと、山本さんと再会してしまった事によって様々な感情が彼女の中に渦巻いているのだろう。
怒り、悲しみ、憎しみ。
整理の付かない感情の渦。
「山本さんから、担当を変えて頂くようご要望がありました」
この様子では何を言ったところで彼女を苦しめるだけかもしれない。
やっぱり今はそっとしておこうと思って、一先ず事務的な要件だけを伝え、その場を去ろうとすると、木下さんは何かを振り切るように立ち上がった。
木「私は」
何処かを見つめたまま、まるで独り言の様に呟く。
木「あの時私は、彼女に死んでほしいとさえ思いました」
強い感情のこもった言葉は呪いのように吐かれ、外の新鮮な空気に溶けて消える。
木「患者様のご要望通り、この治験は他の者に任せますので」
そう言って私達の方を向くと、軽く会釈をして去って行った。
決して低い訳ではない筈の木下さんの背が、細く、小さく見える。
医療過誤は医療現場の闇だ。
そして何処の医療現場でも潜んでいるもの。
明るみに出ないだけでその闇はずっとずっと私達のそばに居る。
「医療過誤ってさ」
木下さんが去っていった方向から目を逸らせないまま私は権の字の白衣の袖を握る。
「患者だけが被害者じゃ無いんだよ。こうやって巻き込まれる人が居る」
高「そうだな…」
あぁ、やっぱり。
「腕のない医者は死んだ方がいいよ」
そいつがメスを持たなければ、こんな事にはなってない。
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いつもご覧頂きありがとうございます。
作者の霜月です。
7話、8話あたりはまたまた録画を消されたことにより。
ドラマの内容を主軸にしつつもセリフ等を独自に変えていこうと思ってます。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
