鋭い視線 ページ20
≪Takashina side≫
「帝華大なんかやめときな」
光の宿っていない濁った瞳に射抜かれた。
まるで鋭く尖った刃物の様に突き刺さる言葉と視線。
いつもこうだ。
さっきまでニコニコと楽しそうにしていたかと思えば、帝華大の話になると彼女の目はいつも鋭くなる。
そして、投げ掛けられる言葉も鋭くなる。
何が彼女をそこまで駆り立てるのか。
気になって聞いたことがあったが、原因は"帝華大"にある、としか話してはくれなかった。
只、一つだけ揺らがないのはAは帝華大を嫌っていて、この上ない程憎んでいるという事。
「私そろそろ征司郎を起こしてくるね」
Aはそう言って、飲み終えた缶を捨てて仮眠室へと消える。
その小さな後ろ姿を見届けて、重く息を吐く。
久々にAからあんな鋭い目で見られた。
それなりに仲が良くなってからは中々お目にかかることは無かった目。
(出会った当初はあんな視線を毎日向けられていたのか……)
初めてAと出会ったのは留学先のアメリカの病院。
最初は物腰柔らかだった彼女の態度が、私が帝華大から来たと言う事を知った途端に急変した。
私を避けるようになり、事務的な会話ですら嫌がるようになった。
何だかそれが納得がいかなくて、気に食わなくて、ある日彼女を問い詰めた。
高『何故、私をそこまで嫌う？何が気に入らない』
『そんなの、決まってんでしょ。帝華大の医者だからだよ』
高『そんな理由で？』
『私にとっては貴方を嫌うのに十分な理由になる。兎に角、私にこれ以上関わらないで』
完全なる拒絶。
そして鋭い言葉と視線。
まるで小動物が大型の動物に対して威嚇している様だった。
こうも人に拒絶されたのは初めてで、それが悔しかったからなのか、何なのか。
私はその日から彼女を絆そうと様々な手を尽くした。
あの小動物にどうやったら警戒を解いてもらえるだろう。
どうやったら心を開いてくれるのだろう。
考えて、手を尽して。
そんな中でとあるオペがあった。
執刀医は私で助手はA。
そのオペで私の腕を見た彼女は一言、こう言った。
『貴方、腕は多少あるのね』
それからは段々と私に対して心を開いてくれるようになり、一緒のオペの回数も重ねて行き、今ではそれなりの仲となった。
それでも私は未だに、Aが何故帝華大を嫌うのか、腕のない医者を嫌うのか、分からないままなのだ。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
